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フルリモート体制下の社内コミュニケーションをデザイン。3つの組織が取り組んだ活性化施策とは

新型コロナ禍以降、多くの企業が取り入れたリモートワーク。社員が柔軟にはたらく場所を選べるなどのメリットがある一方、顔を合わせる機会が減ることでコミュニケーションの質が下がらないかと気にする声も聞かれます。
フルリモート勤務を基本としているNUTIONでは、直接顔を合わせなくても円滑にコミュニケーションがとれるよう、組織ごとにさまざまな取り組みを実施しています。今回は、採用ソリューション事業部、クライアントP&M本部、新規サービス開発本部の3名に、それぞれの部署で行ったコミュニケーション施策について話を聞きました。

  • 大山 聖華 さん

    採用ソリューション事業部 制作統括部 制作部 デザイン第3グループ デザイナー

    2022年にグループ企業からパーソルキャリアに転籍。同時にデザイン未経験からデザイナーに転身。現在は「doda」求人情報サービスに掲載する求人広告のグラフィック制作などを担当。最近では、社内外のHR領域にまつわるデザイン制作も行う。

  • 冨田 真依子 さん

    新規サービス開発本部 新規サービス開発統括部 サービス支援部 戦略デザイングループ リードディレクター

    2023年にパーソルキャリアへ入社。現在は、デザイナーとして新規事業のサービスデザインを担当。またデザイン組織支援の活動として、「キャリアオーナーシップ」の社内浸透プロジェクトにもプロデューサーとして参加。社内でワークショップやイベントの企画・運営を行う。

  • 檜山 智仁 さん

    クライアントP&M本部 プロダクト統括部 クライアントサービスデザイン部 デザイン第1グループ マネジャー

    2023年パーソルキャリアへ入社。現在は、デザイン組織構築のための各種施策や採用、組織運営に関する業務の仕組み化、中途採用支援システム「doda CONNECT」に関するプロジェクトなど、パーソルキャリアの法人向けプロダクトの最大化を推進。

フルリモート体制での勤務、相互理解をどう深めるか

はじめに、フルリモート勤務を行うようになり、社内コミュニケーションで工夫が必要だと感じる場面はありましたか?

冨田:

私はデザイン組織を横断したプロジェクトに携わっているのですが、リモートだとテキストコミュニケーションが中心になるので、顔を合わせる機会が少なく気軽な相談が難しくなりがちではありますよね。例えば、自身のキャリアに関する悩みなど、誰かに話したいけど、上長に相談の時間をもらって話すほどではないことだったり…。そういうときに気軽に話せる場や、相談相手が見つかりやすくなるといいなと思っていました。

大山:

私が所属する採用ソリューション事業部では、メンバー同士の相互理解をもっと深められる感覚がありましたね。私たちの事業部は案件ごとにチーム分けされていて、専門領域に特化する形で動画やグラフィック、Webサイトなどの制作を担当するため、どうしても個人プレイになりやすいんです。

檜山:

クライアントP&M本部のクライアントサービスデザイン部でも、メンバーごとに別々のプロジェクトに取り組んでいるので、各々の強みやお互いの制作した最終アウトプットを見る機会がないという課題がありました。本来、我々の仕事は完成までのプロセスも大切です。どんな背景や想いで作られたのか、制約条件、なぜ最終形をベストと考えたのか。そこまで含めた共有を日常業務の中で行いたいけど、機会を作りにくい状況がありました。

相互理解を深める、「リアルで集まる体験」をデザインする

そんな課題を受けて、NUTIONの各組織ではどんな施策を行っているのでしょうか?

檜山:

クライアントサービスデザイン部では、メンバーがプロジェクトを越えて交流し相互理解を深められるよう、所属メンバー全員で丸の内に集まり、日帰り合宿を行いました。すでに1on1やチーム会などの取り組みは行っていましたが、実際に会って時間を共にしながら一緒に何かを考えて作る体験を通して、よりお互いのことを深く理解できるのではないかと考えたためです。当日のプログラムは、日頃デザイナーが触れる機会の少ないビジネス知識のインプットから始め、パーソルグループの既存事業や他社のプロダクトのビジネスモデル理解、マーケットや事業内容の分析を行った上で、リブランディングの案を考えてもらうというものでした。

クライアントサービスデザイン部の日帰り合宿での、ワークインプットの様子

冨田:

私が参加しているNUTION運営チームでは、メンバーみんなで大手町オフィスに集まって、「キャリアオーナーシップPJTツール(※1)」を活用したワークショップを行いました。このツールBOXはデザイナー同士の相互理解を目的として作られているので、私たちの部内で起こっていた「気軽に相談するのが難しい」「部門を超えたコミュニケーションが少ない」という課題解決に使えるのではないかと考えたんです。
具体的には、「人生に影響を与えた原体験の深掘り」「自分にとって、これまで携わった中での最高な仕事」「これから何をデザインしていきたいか」を書き出し、それぞれ共有してもらいつつ質問し合うワークを行いました。

(※1)2023年5月、NUTIONによる「デザイナーのキャリアオーナーシップ探索プロジェクト」第4弾として公開した、デザイナー向けキャリアオーナーシップ育成ツール「DESIGNERS ARE DESIGNING」(https://nution.persol-career.co.jp/stories/20230526/)のこと

デザイン組織を横断したワークショップにて、メンバーがこれまで携わった仕事について話す様子

大山:

採用ソリューション事業部でも、メンバーから「実際に集まれる機会を作りたい」という声が上がったことをきっかけに、メンバー同士の相互理解を深める「クリエイティブワークショップ」を合宿形式で2回実施しました。1回目は品川で開催し、メンバーの「人となりを知ること」を目標に、ペアを組んでそれぞれの他己紹介を行ったあと、相手をイメージしたコラージュ作品を手作りするワークを行いました。2回目は池袋で開催し、3チームに分かれて「麺/ごはん/パン」の魅力をA2用紙にまとめてプレゼンするワークと、「HRデザイナーを定義する」というワークを行いました。私たちは人材業界のデザイナーということで、「HRデザイナー」と呼ばれることがあるのですが、そもそもどんな存在なのか原点に戻って考え直す機会を作りたいと考えていたんです。

採用ソリューション事業部のクリエイティブワークショップでの、紙を使ったワークの様子

各チーム、リアルで集まる場を積極的に設けているんですね。それぞれの取り組みにおいて、大切にしたことを教えてください

檜山:

合宿参加メンバーの満足度を一番意識しましたね。新しい知識が得られて日常業務でも役立ち、交流によって相互理解が深まるような体験にすることを目指しました。そのために、チームメンバー全員に役割を振り分け、協力しながら達成を目指す設計にしました。一人ひとりに責任が伴いほかのメンバーとの連携が不可欠になることで、やりとりをするコミュニケーションの量が増え、相互理解の促進になるはずと考えたんです。

クライアントサービスデザイン部のワークで、役割を担ったメンバーが発表している様子

冨田:

私たちは、メンバーが「参加している感」をしっかり感じられるようにすることを大事にしました。オンラインでのコミュニケーションだと、どうしても画面の前でどんな姿勢や気持ちで参加しているか掴みづらいところがあります。今回、実際に顔を合わせて行えたことで、日頃は異なる部署ではたらいているメンバーも含め、お互いの距離が近く感じられたのではないかと思います。

デザイン組織を横断したワークショップにて、メンバーが互いのキャリアについて話し合う様子

大山:

参加メンバーの人となりをお互いにしっかり知れることは私たちも意識していましたね。それと、私たちが取り入れたのは、あえて「手作りする」ことでした。普段はデザインをするときIllustratorなどデジタルツールで制作していますが、せっかく顔を合わせて取り組むので、PCを持ち寄ってではなく、もっとアナログなやり方のほうが楽しいのではないかと。そこで1回目のワークでは、紙などを切ったり貼ったりして実際に自分の手を動かしてもらう内容にしたんです。普段とはまた違った、クリエイティブな脳の使い方ができたかなと思います。

採用ソリューション事業部のコラージュ作品を手作りするワークの様子

施策を通して生まれた、互いに助け合える風通しのいい関係性

参加したメンバーの反応はいかがでしたか?

大山:

ワークショップ終了後のアンケートでは「直接顔を合わせたことで距離が近づいた」「いろんな考えに触れることができ刺激になった」などポジティブな反応が多くて。「やってよかった!」と運営メンバーの間でも手応えを実感しました。

檜山:

僕たちの合宿も、終了後のアンケートでは満足度が85.7%と非常に高く、「有意義な時間を過ごせた」「一体感が生まれ、相互理解が深まった」などの感想がありました。合宿では、ワイワイ交流できる時間も設計できたらと、ランチや終了後の打ち上げも用意したんです。それがとても盛り上がって、一体感が強まる時間になったんじゃないかと思います。

冨田:

一緒にワークをしたあとの打ち上げって、盛り上がりますよね!私たちの打ち上げでも、「誰にも相談できずにいたキャリアの悩みを話すことができた」と言っていた人がいて、腹を割って話せる関係に近づけたようでうれしかったです。ワークショップは初めて会ったメンバー同士でしたが、一緒に何かをやったことで相互理解が深まり、距離が縮まったんじゃないかと思います。

施策を終え、社内コミュニケーションで変化はありましたか?

冨田:

悩みを相談したり、仕事で上手くいかないことがあったときにそれを気軽に発信できるようになったりと、風通しのいい関係を築くことができたと感じます。

大山:

私たちの部署でも、制作しているデザインに対して意見などをもらうとき、以前よりも様々なメンバーが立場関係なく意見を言い合うようになりました。また、自分が業務を多く抱えてしまっているとき、手を貸してほしいなどの相談もしやすくなったのは、とてもうれしい変化でしたね。

檜山:

オンライン会議でも、お互いに気を遣うことなく本質的な意見が言い合えるようになった実感があります。合宿で実際に会ってその人の雰囲気を知り、さらに1つのものを共創することでお互いを深く理解し合った状態になったので、コミュニケーションの質が今までよりも高くなったのではないでしょうか。

オンライン上でも、関係が深まる仕組みをつくる

リアルで行う施策だけではなく、オンラインコミュニケーションにおいても工夫していることはありますか?

檜山:

クライアントサービスデザイン部では、オンラインで毎週行っているチーム会のやり方をブラッシュアップしました。以前は「今週やったこと」を一人ずつ話していたのですが、業務連絡だけだと相手の状況が分かりにくく、お互いの理解も深まらなかったんです。そこで新しいチーム会では、リモート環境だと気付きにくいメンバーの状況や変化を多面的かつ素早くキャッチできることを目的に置きました。最初の5分で業務連絡の確認をしたあと、1チーム5人に分かれて今の自分のコンディションや直近の業務をシェアし、最後に雑談の時間をとる。この雑談は週ごとにテーマを替えていて、その場で Figmaに話したいことをみんなで書き込んでから、それを各自5分で発表し、最後にみんなで質疑応答をするという形式です。

これによって、主体的に話すのが苦手な人でも気軽に話せるようになり、全体のコミュニケーション量が増えました。メンバー同士がお互いの様子を確認しやすくなったり、中途入社の方が分からないことを気軽に聞ける関係性にも繋がりましたね。実は、入社後に早期から活躍する人が以前より増えたんですよ。

大山:

雑談の時間って大事ですよね。採用ソリューション本部では、毎日11時にバーチャルオフィスに集まる時間を作っています。リモート勤務になった中で、1日1回、コミュニケーションの時間を作ろうとなったのがきっかけです。内容は、日替わりで日直を決め、その人を中心にプライベートや時事ネタなどの雑談をしたあと、全体での共有事項を確認する2部構成です。雑談では、「夏休みの思い出」や「最近ニュースで気になったもの」だったり、ざっくばらんに話しています。

日直をやってもらうことで、その人の好きなものや趣味といった人となりが前よりも分かるようになりました。「○○さんが話していたもの食べました!」「スーパーで探してみました!」など会話が広がったり、「趣味が同じなので、ぜひ話しましょう!」といった、その場だけにとどまらないコミュニケーションにも繋がっていますね。

今後は部署を越え、NUTION全体の「はたらきやすい環境」のデザインへ

取り組みを実施して感じたことや、今後チャレンジしたいことがあれば教えてください。

檜山:

もっといろんな人の力を借りて、社内のデザイナーがここではたらけてよかったと思えるチャレンジができたらいいですね。また、今回の合宿をいい形で実施することができたので、今後は私が所属する部だけでなくNUTION全体に展開していくのもいいですし、それぞれの部署で効果があった施策をシェアし合えるといいなと思います。

冨田:

たしかに、さまざまな想いをもって作り上げた取り組みを集約させて、会社全体にシェアしていくのはとても大切なアクションですね。私は今日お二人とお話しして、どの部署でもコミュニケーションのことで近い悩みを持っているんだと気づけたことも大きかったです。今後は、組織を越えてキャリアで悩むデザイナーを集めてワークショップを行ったり、社外に向けた施策、新入社員の入社後のオンボーディングに組み込めるような企画に挑戦していけたらと思っています。

大山:

私もお二人から自分では思い浮かばなかったアイディアを聞くことができたので、参考にさせてもらいながら新たな施策にチャレンジしたいです。お互いの取り組みのシェアを通して活発なコミュニケーションに繋げ、NUTIONをさらにいい組織にしていきたいですね。

座談会メンバー:(左上)檜山、(右上)冨田、(中下)大山

※ 所属・肩書および仕事内容は、取材当時のものです。

執筆:星野 正太(White note Inc)

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