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中途入社者が早期に活躍できる環境をデザイン。「オンボーディングタスクフォース」プロジェクト

2022年4月、中途入社メンバーの早期活躍を支援することを目的とした取り組み「オンボーディングタスクフォース」が立ち上がりました。オンボーディングとは、新入社員が組織の環境やカルチャーに馴染み、活躍できるようになるまでの一連のプロセスをサポートする施策です。

NUTIONがデザイン組織として拡大していくにつれて課題となってきたのは、中途入社メンバーが入社後にすぐに活躍できるように充分な環境を整備し、サポート体制を構築すること。より効果の高いオンボーディングを実現するために、プロジェクトはどのようなプロセスで進められていったのでしょうか。プロジェクトメンバーである、辻尾真由美さんと寺田恵さんに詳しくお話を伺いました。

  • 辻尾 真由美 さん

    ※辻尾は退職していますが、本人の同意を得て、掲載を継続しています。

    映像作家のキャリアからスタート。デザイナーへ転身し、SaaS系スタートアップでデザイナー・カスタマーサクセスとして顧客接点の最適化とテックタッチ施策に従事。その後、2022年にパーソルキャリア入社。サービスデザイナーとして、新規・既存事業の推進に寄与。

  • 寺田 恵 さん

    P&M戦略本部 デザイン推進統括部 横断戦略デザイン部 横断サービスデザイングループ リードディレクター

    新卒でパーソルプロセス&テクノロジー株式会社に入社し、業務・RPAコンサルタントとしてキャリアをスタート。スタートアップで一般社団法人の複業経験を積む。グループ内業務を体験する「ジョブトライアル」にて、現部署と出会い2022年10月にパーソルキャリアへ転籍。「人の可能性を最大化する」を自身のテーマに、新規事業開発やサービス改善を通して、人に様々なスポットライトが当たる環境を作ることを目指している。

デザイン組織として感じていたオンボーディングの重要性

まずは、お二人がオンボーディングタスクフォースに参加した経緯を教えてください。

辻尾:

私は立ち上げ当初から参加しています。前職でオンボーディングに関わる仕事をしていたこともあり、入社時に、マネジャーから「オンボーディングの仕組みをぜひ導入してほしい」と声をかけられました。デザイン組織として、入社したばかりのデザイナーがそれぞれの力をしっかり発揮できるような土壌づくりやプロセスづくりが重要という共通認識はあったものの、当時は、オンボーディングに関しては手を付けられていない状況でした。私自身も、中途入社時の体験に改善の余地を感じたことや、組織の拡大に伴い、改めて受け入れ体制を整える必要があるタイミングだったこともあり、取り組むことになりました。

寺田:

私は立ち上げから約半年後の2022年10月から参加しています。興味を持ったきっかけは、私が中途入社する際、このオンボーディングタスクフォースから生まれた初期のMVPを実際に体験したことでした。組織に馴染めるか不安な中で、組織のカルチャーやルールを理解していくためのサポートの手厚さに感動し、自分もこのプロジェクトに参加したいと思いました。

※MVP(Minimum Viable Product)…顧客に価値を提供できる必要最低限の機能を揃えたプロダクト

人によって得られる情報にバラつきが発生してしまっていた

オンボーディングに関して、抱えていた課題を具体的に教えてください。

辻尾:

当時のオンボーディングは、人によって品質にバラつきが出ているような状態でした。共通で使っているテンプレートは一応あったものの、入社する人に合わせて提供する情報を変えていたりと個別最適化が進んでしまっていたんです。また、どれが最新の資料か分からない、情報があちこちに散らばっているなどの課題もありました。受け入れる側が情報をしっかり提供して、入社する側が自ら情報を取りに行ける場合は、それでもいいのですが、そうじゃない場合も当然あり、業務遂行に必須なはずの前提知識や情報を知らないままになってしまう社員もいました。

受け入れる側と、入社する側の姿勢次第で、得られる情報の内容や量に差が発生していたということですか。

辻尾:

そうですね。業務上の前提知識や情報だけでなく、組織のカルチャーなどの理解についても、人によってかなりバラつきが出ていました。また、社内の人脈構築についても、対話のきっかけをつくるためのワークショップなど単発の施策はやっていたものの、一連の流れでプログラムされておらず、形だけのものになっていたため、継続的で発展的な人脈構築にはなかなか繋がっていませんでした。業務中に困ったことがあっても「誰に聞いたらいいか分からない」という状態も度々発生していたんです。

デザインプロセスを用いて、入社者目線でオンボーディングプログラム体験を設計

そのような課題がある中で、どのように施策を進めていきましたか?

辻尾:

施策立案していく上では、普段から通常業務でやっているような、ユーザーリサーチから課題を発見し、解決策のアイディエーションをしていくというデザインプロセスを活用しました。具体的には、入社6ヶ月以内のメンバーへのアンケートやワークショップをもとに施策を作り、オンボーディングプログラムを体験した中途入社メンバーからのフィードバックをもとにした再構築のプロセスを組んで、プログラムを改善していくという方法で進めていきました。

社内プロジェクトにもデザインのプロセスを取り入れたんですね。お二人のほかには、どのようなチーム体制で進められたのでしょうか?

辻尾:

私たちのほかに、UXリサーチャーの小野さん、UI/UXチームの長沢さんがチームメンバーです。UXリサーチャー、UI/UXデザイナー、サービスデザイナーというそれぞれの職種から、オンボーディングに対して特に課題感を感じていたメンバーが集まりました。

寺田:

どのメンバーもGiver精神に溢れていましたよね。中途入社者や受け入れ担当をはじめとしたオンボーディングに関わるすべての人たちの気持ちを想像しながら、日々の仕事やコミュニケーションの中から課題を見つけて、議論のテーマにしていました。

中途入社者の声から浮き彫りになってきた、認知の差や課題

プロジェクトはどのようなことからスタートしたのでしょうか?

辻尾:

まず前提として「オリエンテーション」と「オンボーディング」の言葉の定義を明確にして、方針にブレが生じないようにしました。私たちがこれからやっていくことは、社内ルールなどを伝えるだけの単発的な「オリエンテーション」ではなく、入社した人材が企業で正しく能力を発揮できるようにするための継続的な「オンボーディング」だよね、とメンバー内で認識をあわせていきました。

その後2週間かけて、オンボーディングに特に力を入れている企業など、他社事例のリサーチを行いました。各事例からも、オンボーディングの一番の目的は「効率化」ではなく、中途社員が「一人のプロフェッショナル」として社内で新しい価値を発揮できるようにすることだと再確認し、そのための社内の関係性づくりが重要だと考えました。

では、社内のリサーチではどんなことが見えてきましたか?

辻尾:

現状把握を目的として3部署の計50名対象のアンケートやインタビューを実施しました。様々な部署があり、また業務で使うツールが入り組んでいて入社フローが複雑になっていることや、情報やルールの認知に差があることを改めて把握しました。組織のベースカルチャーや普段の業務に必要な社内ルールですら、知らないままになっている人がいることが数字として浮き彫りになってきて。よりオンボーディングの重要性を感じましたね。

中途入社者を交えた課題発見のためのワークショップはどのように行いましたか?

辻尾:

入社3ヶ月以内で、特にペインを強く感じているメンバーを5名程度ピックアップしてワークショップを行いました。ここで見えてきたのは、「助けてほしいときに、その内容を的確に言語化して伝えるのが難しい」という問題や「誰にフォローを求めたらいいのか分からない」といった心理的なハードルの大きさでした。また、業務が忙しくなると、ほか社員との気軽な交流の時間が減り、周囲に質問できる機会が少なくなってしまうなど、より具体的な課題や原因が見えてきました。

寺田:

「なんでも分からないことがあったら聞いていいよ」と言ってくれる人がいたとしても、自分が資料を見落としているだけなのか、忘れているだけなのか、みんなが知らないことなのか、それすら分からず、聞きづらいということもあるんですよね。

辻尾:

結局、ミスを指摘されるまで知らないままになってしまう。そうなってしまうと、入社する側にとっても、受け入れる側にとってもお互いに気持ちよくないし、いい体験にはならないですよね。改めてオンボーディングにしっかりと時間をかけていかなければならないと実感しました。

見えてきた課題をもとに、方針決定・施策立案

アンケートやワークショップの結果をもとに、オンボーディングの方針に落とし込む上で、苦労したことはありますか?

辻尾:

出てきた課題は、具体的なものから抽象度の高いものまで様々でした。また、入社したメンバーによっても、もっと手厚いフォローがほしいのか、ある程度自由にさせてほしいのかは違います。ターゲットをシンプルに絞れるものではなかったので、どの切り口で課題抽出するかに苦労しました。

今回のプロジェクトの中でできる範囲のことを一つひとつ整理しながら、最初は、日常の業務を進める上で特に課題感が強く、改善することによる成果も見えやすい「業務遂行に必要な知識とルールの理解」や「信頼関係の構築」に絞ることにしました。

決定した方針をもとに、施策のアイディアを出し具体化していったんですね。特徴的な新しい施策はありますか?

辻尾:

オンボーディングの担当者を1名にするのではなく、人脈形成をフォローする「コネクト」、入社時のメンタルをフォローする「メンタリング」、社内に必要なシステム関連作業をフォローする「セットアップ」という3つのロール(役割)に分解して負担を減らしました。

担当者ではなく、ロールというところがポイントです。「私、コネクトとメンタリングを担当します!」「セットアップ、フォローします!」といった感じでフレキシブルに役割分担ができるので、リソースの限られたチーム内でもカバーし合うことができますし、チームみんなでサポートするという意識を醸成することができますからね。

施策をただ実行するだけでなく、社内やチーム全体の意識から変えようとしていたということですね?

辻尾:

そうですね。担当者だけがタスクとしてオンボーディングを進めるのではなく、チーム全員が助け合いながらオンボーディングに関与していく意識をもてるようになってほしいと思っています。そういう意味も込めて、プロジェクトのコンセプトを「ALL FOR ONE」にしたんです。

MVPでの気付きをもとに、改善サイクルを回し続ける

2022年10月にMVPをリリースされましたが、どのように進めていったのでしょうか?

辻尾:

3ヶ月間のオンボーディングプログラムを一元化した「NUTION Player’s Program TOOL」を作成してオンボーディングを実施しました。もちろん、プログラム内容は随時アップデートしていく前提で、MVPをリリースしました。

実際やってみてどうでしたか?

辻尾:

やってみることで、抜け漏れや新しい課題が見つかりましたね。ただ、プログラムにはあらかじめアジャイルな再構築のプロセスも組み込んでいたので、MVPから見えてきた細かな課題はすぐに改善していていくことができました。

再構築をクイックに行うためにどのようなことを意識しましたか?

辻尾:

月に1回「NUTION Player’s Program TOOL」のアップデートの日を設けていました。実際にオンボーディングプログラムを利用した中途社員にもアンケートを行い、改善要望があった場合はスプレッドシートにストックしていきました。

寺田:

アンケートからのインプットやSlack、日常の会話などから社員が困っていることを吸い上げて、課題の抽出・優先度づけをしながら、改善サイクルを回していきました。

特に印象に残っている改善例があれば教えてください。

辻尾:

以前から実施していた「偏愛マップ」という施策は、入社者が「偏愛するもの」を語ることを通じて社内の交流や信頼関係構築を促すものなのですが、それまでは毎回タスクフォースチームが担当者となって運営していたんです。ただ、その方法は持続的ではないとも考えていて。そこで、チームメンバーの小野さんに運用の手引きやテンプレートを作ってもらい、「コネクト」の役割をもつ人が自主運営できるように設計しました。これにより、決まった担当者がいなくても「偏愛マップ」が運用されていく仕組みができて、今では私たちがリードしなくても定期的に開催されるようになりました。

運用からわずか4ヶ月で期待以上の成果。他部署での横展開も。

運用後、社内の反応はいかがでしたか?

辻尾:

マネジャー層からは期待以上の成果が出せているとのコメントをもらいました。中途入社者からは「これまで大手やスタートアップなど規模もカルチャーも違う4社を経験してきたけど、こんなに手厚いフォローをしてもらえると思わなかったです」という声も。ほかの部署でも本プログラムを利用してオンボーディングを実施するなど、横展開も開始されました。利用したほかの部署からは「よくできている!」と感謝されています。

実際に社内に変化があったなと思う部分はありましたか?

寺田:

人によって品質にバラつきが生じたりすることなく中途社員の受け入れができ、マネジャーの負担が減ったというのはもちろんですが、もっと大きなことは、組織内の対話が生まれるようになったことですね。「NUTION Player’s Program TOOL」で、オンボーディングに関する情報やツールを統一し可視化することで、曖昧だった部分も見えるようになり、「ここを直したい」「もっとよくできる」というような声が社員から届くようになりました。

プロジェクトは縮小へ。人任せではなく、社員全員が自主的にフォローし合える組織になってほしい。

オンボーディングに関する今後の取り組みや計画はありますか?

辻尾:

品質向上という目的を達成したので、プロジェクトは一旦縮小に向かっています。終わらせるかどうかについてはすごく悩みましたが、議論の結果、気付いた人が改善を行いながら運営するといった自主運営にシフトすることになりました。しっかり運用されるのかという不安もありますが、他部署への横展開も進んでいますし、ここ最近は社員から自主的に「ここ、改善しておきました!」みたいな連絡が入り始めていて、すごくうれしく感じています。

最後に、オンボーディングに関して、社員や組織に対する期待を教えてください。

辻尾:

「中途入社社員に対して適切なオンボーディング環境で、早期活躍に向けて支援する」というプロジェクトの当初の目的を、キャリアオーナーシップを育む会社として、社員同士でフォローし合いながら体現できる組織になってほしいです。そのために、人任せではなく、社員全員がオンボーディングに関与するという意識や文化が醸成されていけばいいなと思います。

寺田:

プロジェクトは解散となりますが、組織としてやるべきことはまだまだたくさんあります。いろんなバックグラウンドを持つ入社者が集まってくる中で、個々が持っている力を存分に発揮でき、デザイナーがデザイナーとして活躍するための土壌をしっかり耕していきたいと思います。

プロジェクトメンバー:(左上)長沢、(中上)後藤、(右上)小野、(左下)辻尾、(右下)寺田

クレジット情報

Lead Project Management  辻尾 真由美

Lead Direction 寺田 惠

Lead UI/UX Design 長沢 小百合

UI/UX Design 後藤 悠伽

UX Research 小野 靖弘

※ 所属・肩書および仕事内容は、取材当時のものです。

執筆:藤岡 優希(Whitenote Inc)
編集:重松 佑(Shhh inc. )

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