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「HR forecaster」2023年度グッドデザイン賞受賞までの道のり。

パーソルキャリアが運営するdodaの200万件以上のマーケットデータを活用した中途採用支援サービス「HR forecaster」が、2023年度グッドデザイン賞を受賞しました。グッドデザイン賞は、1957年に創設された日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨のしくみで、デザインによる課題解決や、人や社会への意義を重視する賞であるため、これからの社会をよりよくするデザインであることの証となります。
各分野の一線で活躍する審査員に評価してもらうために、どのような工夫をしたのでしょうか。今回は、グッドデザイン賞の申請を担当した「HR forecaster」リードデザイナーの比企真知子さんに、お話を聞きました。

  • 比企 真知子 さん

    テクノロジー本部 デザイン推進統括部 クライアントサービスデザイン部 デザイン第2グループ リードデザイナー/サブマネジャー

    大学ではテキスタイルデザインを専攻し、卒業後はパーソルの前身の学生援護会に入社。ゼネラル系の大手企業の求人広告や採用HP、官公庁系のコンペや公共事業関連のデザインを担当。クリエイティブチームのリーダーを経て、その後、社内ベンチャー組織で新規事業のUIUXデザイナーとして参画。現在は、HR forecasterのリードデザイナー。男の子2人の母でもある。

グッドデザイン賞の受賞はデザイナーの生きやすさにつながる

まずはグッドデザイン賞に応募することになった背景を教えてください。

比企:

過去にも、いくつかのアワードにチャレンジしており、「HRテクノロジー大賞」のイノベーション賞や、日本の人事部の「HRアワード」の優秀賞の受賞実績があります。このように、自分たちのサービスを外部から評価してもらう取り組みを行ってきたなかで、「次はグッドデザイン賞にチャレンジしよう」と1年前から決めていました。

実際、受賞後には、どんな変化がありましたか?

比企:

売上に対する効果は、これから徐々に出てくると思います。受賞に関連してたくさんの記事が出たので、プロモーション効果はありました。続けて、社内でも「HR forecaster」のデザイナーチームで「VP賞」、個人では「HEROES」と、2つのアワードを受賞できました。
※ HEROESとは、ハイパフォーマーの労い・新たな活力を生む機会の提供・事業部を超えた繋がり醸成することを目的とした賞

それは、おめでとうございます!

比企:

ありがとうございます!とはいえ、たまたま私がリードデザイナーを担当しているときに評価されただけであって、今まで関わってきた歴代のデザイナーをはじめ、プロジェクトにかかわるメンバー全員が評価されたと思っています。

プロジェクトチームの力ということでしょうか?

比企:

そう思います。今回、受賞した機会を生かして、デザイナーのプレゼンスを少しでもあげることができればよいと思っています。

デザイナーのプレゼンスを上げるうえで、グッドデザイン賞のような外部評価が大きく寄与するということですか?

比企:

そうですね。ビジネスの世界では、売上の数字をもとに半年とか1年くらいの短いスパンで評価されがちですが、デザインの効果が数字に表れるには、もっと長い時間がかかるものなんですね。そう考えると、グッドデザイン賞のような非デザイナーの方にも広くわかりやすい外部評価は、デザイナー組織としての長期的な成果を客観的に示す指標になり得ますし、それを受け継いでいくことでデザイナーのプレゼンスが上がり、デザイナーの働きやすさにつながると考えています。

なるほど。では、今回パーソルキャリアにとって初のグッドデザイン賞の受賞でしたが、ほかのサービスでも受賞に向けたトライをすべきだということですね?

比企:

はい。個人的には、「HR forecaster」が特別なのではなく、ほかのプロダクトを担当されているみなさんも、当たり前にやってきたことをていねいに伝えれば、十分に受賞を狙えると思っています。

グッドデザイン賞受賞までにやったこと

グッドデザイン賞の申請にあたって、どのように準備を進めて行かれたのか、教えてください。

比企:

当時、私は「HR forecaster」に参画したばかりだったので、前任のリードデザイナーで、業務委託として引き続き携わっていた島津さんと一緒に進めていきました。グッドデザイン賞といえば工芸品のようなかたちのあるモノに対して出されるイメージが強かったので、「HR forecaster」のようなデジタルサービスはどのような観点で評価されるのかを調べるところから始めることにしました。

GOOD DESIGN AWARD Webサイトより

そのなかで、表層的なビジュアルではなく、サービスコンセプトが世の中に与える影響について、人間的視点・産業的視点・社会的視点・時間的視点から複合的に評価されていることを知り、どんなポイントをアピールすれば良いかを考えていきました。あとは、審査員も公表されているので、どんなバックグラウンドをお持ちの方がいるのかも調べていきましたね。

一次審査は書類選考なんですよね。

比企:

はい。デザインのポイントを50文字×3つ、デザインの生まれた理由と背景を400字など、エントリーシートに記載するテキストを複数用意する必要がありました。

そうしたデザインコンセプトの言語化は、グッドデザイン賞に応募する前から、すでにあったものなんですか?

比企:

いえ、すべては島津さんの心の中に…という感じでした。なので、応募に必要なエモいテキストは島津さんに書いてもらって、私が壁打ち相手になりながら、ちゃんと伝わる形へと一緒にブラッシュアップしていきました。サービスのリードデザイナーだった島津さんや、「HR forecaster」のデザインを一番多く手がけられた田中裕子さんの感性をできるだけ大切にしたいと思ったので、私はサポーターに徹していた感じです。

二次審査は展示会形式で行われたそうですね。

比企:

はい。ブースを作るために、サービスを理解してもらうためのA2パネルやサービスの思いを伝えるA4パネル、あとはサービスを擬似体験できるリーフレットを作成しました。

サービスサイトは白とグリーンを基調としたやわらかいイメージですが、展示用のA2パネルやリーフレットでダークブルーを多く使用されたのは、何か理由があるのですか?

比企:

もともと「HR forecaster」では、グリーン単色をベースにしたトンマナでしたが、1年ほど前にグリーンからダークブルーにかけてグラデーションになっているモザイクのシンボルロゴができたときにダークブルーもデザインに使うようになりました。サービスができた当初から、機能も拡張し、扱うデータも増え、いろいろな採用シーンで活用いただけるサービスに進化しました。そんな思いをシンボルロゴのグラデーションで表現しています。

なるほど。そうして無事、受賞が決まり、審査員のコメントをいただきましたが、そのなかで特にうれしかったポイントはありますか?

比企:

いちユーザーとして初めて「HR forecaster」を触ったときに、「UIがすごくていねいに作られているな」と感じていたので、その点を褒めていただけたのはうれしかったですね。「HR forecaster」って、フロントエンジニアのデザインの再現性がとても高いんですよ。いつもデザイナーが作ったものを、そのまま再現してくださる点がすばらしいんです。デイリースクラムで「これってデザイナーさんの意図と合っていますか?」と、実装する前に細かく確認してくれて。だから「HR forecaster」のデザインが評価されたのは、エンジニアのおかげでもあります。本当に感謝しています。

デザイナーが入れ替わってもブレないためのデザイン原則の作り方とは

「HR forecaster」には、これまで多くのデザイナーが携わって来ましたが、比企さんも途中からの参画ということで、デザインコンセプトの引き継ぎで困るようなことはありませんでしたか?

比企:

そうですね。私のパーソルキャリア歴は長いのですが、「HR forecaster」を担当するようになったのは1年ほど前です。まずは島津さんのサービスに対する愛着やこだわりを理解するところから始めたいと思い、島津さんと外部アドバイザーの方の3人でデザイン原則を作る取り組みをしました。言語化してみると、「こだわってそうしていること」と「なんとなくそうなっちゃっていること」がごちゃ混ぜになっていたので、そこを切り分けながら、“HR forecasterらしさ”を定義していったんです。

そのステップをもう少し詳しく教えていただけますか?

比企:

まずはそれぞれが「HR forecaster」に対して持っているイメージを書き出してグルーピングしていきました。そうすると、自分たちの理想と実際の画面とではやや乖離がありそうだという話になり、「誠実・やさしい・教えてくれる・寄り添う」といった理想とするキーワードが、実際の画面に当てはまるのかをチェックしていきました。そうして最終的に、私たちが大事にしたいところを言語化して、これらを指針として今後はデザインしていこうと決めました。

比企さんは直近ではどんなお仕事をされているのですか?

比企:

今はLPのリニューアルに向けて動いていたり、UIに関しては機能ごとに担当のデザイナーがいるので、そのレビューをしたり。デザイナーチーム全体でパフォーマンスを上げるために、レビューの回数を増やしてデザインサイクルを速める取り組みをしているところです。あと、機能リリースのスピードがとても速いので、うまくリソース配分しながらにはなりますが、開発スピードを落とさずクオリティを担保できるようなデザインシステムを構築していきたいなと考えています。

では最後に、比企さんの今後の目標を教えてください。

比企:

「HR forecaster」は今サービスとして0→1フェーズが終わって1→10フェーズに入っているなかで、UIUX的にこれまでの0→1フェーズでは未整理だったデザインを、改めて整理していかなければならない段階に入っていると思うんですね。とはいえ、サービスは前に前に進み続けていくので、いかにバランスをとりながら、本質を残してほかを削ぎ落としていくかをを考えるのが私の役割なんだろうなと思っています。

他方、私は長く人材の募集・選考フェーズのサービスに携わっていたので、その手前の採用計画や要件定義を改善しなければ、募集・選考フェーズの効果は上がらないことを痛感してきました。「HR forecaster」が支援している採用計画や要件定義のフェーズで、各企業がそれぞれの良さを求職者にちゃんとアピールできるような体験設計ができれば、採用は大きく変わると信じています。これからも、「HR forecaster」のデザインを通じて、寄与していけたらと思っています。

※ 所属・肩書および仕事内容は、取材当時のものです。


執筆:野本 纏花
編集:重松 佑(Shhh inc. )

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