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デザイン組織のPdM3名が語る「事業とデザインの付き合い方」

プロダクトの戦略作りやその実行において、重要な役割を担うPdM(プロダクトマネジャー)という仕事。今回は、NUTIONのPdMがはたらく上でどのようなことを大切にしているのか、また、デザイン組織のPdMとして“事業とデザイン”にどのように向き合っているのかなどについて、座談会形式でお話を伺いました。

  • 長谷川 椋平 さん

    プロダクト&マーケティング事業本部 P&M戦略本部 デザイン推進統括部 横断戦略デザイン部
    HiProサービスデザイングループ サブマネジャー

    アプリ開発の受託や、グルメSNSの起業を経験後、パーソルキャリアの新規サービス開発を担う部署に、サービスデザイナーとして2020年に参画。1年半で13回のデザインスプリントを担当後、企業とプロフェッショナル人材をつなぐマッチングプラットフォームサービス「HiPro Direct」の立ち上げに参画。現在は同サービスのプロダクトマネジャーとして、20人の開発チームを管掌。

  • 伊藤 光生 さん

    カスタマーP&M本部 はたらく未来図構想統括部 PERSOL_MIRAIZ部 MIRAIZ戦略デザイングループ
    プロデューサー

    「学びをおもしろく」を人生のミッションに、大手教育会社にて編集者としてキャリアをスタート。顧客に価値を届ける中で、より良いサービスを提供するためにはテクノロジーの活用が必須と感じ、プロダクトマネジャーに転身。一貫して、子ども向けの学習領域にて、大企業とスタートアップの双方で、既存事業グロース、新規事業立ち上げ、プロダクト組織開発などを経験。2023年にパーソルキャリアに入社。現在は社会人向け学習領域の新規事業を担当。

  • 辻尾 真由美 さん

    ※辻尾は退職していますが、本人の同意を得て、掲載を継続しています。

    映像作家のキャリアからスタート。デザイナーへ転身し、SaaS系スタートアップでデザイナー・カスタマーサクセスとして顧客接点の最適化とテックタッチ施策に従事。その後、2022年にパーソルキャリア入社。サービスデザイナーとして、新規・既存事業の推進に寄与。

PdMとしての業務内容は?

長谷川:

2022年7月にリリースした「HiPro Direct」のPdMを担当しています。業務内容としては、事業責任者や事業企画、営業のチームと連携しながら、主にデザインやシステムの側面からプロダクト戦略の策定やロードマップの管理に加えて、プロダクトの企画などの実務的な部分も担っています。また、開発チームがエンジニア、デザイナー、企画合わせて20名ぐらいいるのですが、そのマネジメントやメンバー育成も行っています。

辻尾:

私は、サービスデザイナーとしてはたらきながら、現在リリースに向けて動いているある新規事業のPdMをしています。業務内容としては、ユーザーリサーチを実行しつつ、そのデータ分析や課題の仮説検証、解決策の取捨選択を行ったり、プロダクトビジョンやロードマップを作成して、仮説と違う部分があれば、都度軌道修正したりしながら、プロダクト全体の進行などを担っています。

伊藤:

僕は2023年の10月に入社して、「PERSOL MIRAIZ」のPdMのロール、さらに、UI/UXデザインチームのマネジメントも行っています。僕の場合は、PdMを専任でやっているというよりは、新規事業の事業グロースや、チームの成長などに関わる必要なロールを適宜担当しています。
戦略策定や、そこに関わるユーザーリサーチはもちろんですが、これからPdMを目指したい方や、ジュニアからミドルへ成長途中の方などに、プロダクトマネジメントをどう進めていくべきかというフォローアップをメインで担っています。

PdMになった経緯は?

長谷川:

現在PdMを務めている「HiPro Direct」ですが、立ち上げ当初はPdMじゃなかったんです。縁があって、事業責任者に企画の推進を手伝ってもらえないかと声をかけてもらい、最初はプロジェクトマネジャーと、サービスデザインの担当としてジョインしました。デザインスプリントを通して、事業戦略とユーザー体験、システム要件を繋げてプロダクト戦略に落とし込んでいって。その立ち回りが評価されて、正式なローンチのタイミングで、PdMに任命してもらいました。

辻尾:

私も入口の部分は、長谷川さんと似ている気がします。入社してすぐに新規サービスのプロジェクトにアサインされて。今のサービスオーナーと一緒にデザインスプリントを行って、その中でいくつか新規事業のプランを作っていたんです。結果、その企画の検証プランが通過してMVP開発につながりました。初めてのことばかりで、勉強しながらではありましたが、一生懸命取り組んだ結果、クローズドβ版の開発から、「PdMとしてやってもらえないか」と声をかけてもらいました。

伊藤:

僕は、ちょうど入社した頃に新規事業でアジャイル開発の導入を進めていきたいという話があったんです。でも、当時はアジャイル開発に知見のあるPdMや、プロダクトオーナーが不足していて。私自身、これまで大企業やスタートアップで、10年ほどプロダクトマネジメントに携わっていたこともあって、経験や知見がある人間として、「PERSOL MIRAIZ」のPdMとしてアサインしてもらいました。

長谷川:

少し前までのパーソルキャリアでは、ディレクター職の人などがPdMを務めることが多かったのですが、最近では、サービスデザイナーがPdMを務めることが増えてきていますよね。伊藤さんのように立ち上げからジョインしたり、僕や辻尾さんのように、UX領域やシステム領域の専門家としての能力を発揮する中で、その価値を認められて、PdMをやってくれないかという声がかかるケースが増えてきているような印象があります。

辻尾:

サービスデザイナーとして取り組んでいく中で、ひとつのロールとしてPdMがしみ出てきているというような感覚ですね。だからこそ、サービスデザイナーとして大事にしている「共創すること」などは変わらず大切にしつつ取り組んでいます。

PdMとして大切にしていることは?

座談会メンバー:(左上)長谷川、(右上)辻尾、(中下)伊藤

伊藤:

PdMは、プロダクトの実装や機能リリースにももちろんコミットしますが、本質的なゴールはそこではありません。大切なのは、その先にあるユーザーや事業のアウトカムを達成すること。すべてはアウトカムのためにあるということを自覚して、プロダクトの“マネジメント”という業務にこだわらずに動くことは日々意識していますね。

辻尾:

それでいうと、私は「この事業が、ユーザーにとってなくてはならないサービスになるか」を常に考えています。そのために、ユーザーと日々対話することに本当に力を入れていて。今担当しているプロジェクトでは、メンバーと、転職希望者との対話の機会を作ったりしながら、メンバー全員がユーザーのニーズやペインを深く理解して自分の言葉として語れるような状態でいることを大切にしています。

長谷川:

僕は、プロダクト単体での成果がわかりやすいようなKPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)に貢献することを意識しています。「HiPro Direct」はサービスの性質として、どうしても人の支援が必要になってくる場面があるんですよね。そうなると、営業やカスタマーサクセスの施策で成果が出ているのか、プロダクトの施策で成果が出ているのかが曖昧になってしまいがち。プロダクトが事業の成長に貢献できているということをしっかり可視化できるようにしています。

伊藤:

サービス全体を俯瞰してみると、プロダクトは一部にすぎないんですよね。だからこそ、ステークホルダーとの円滑なコミュニケーションはもちろん、プロダクト作りに関わるメンバーそれぞれがモチベートされるようなコミュニケーションをしていくことも大切ですよね。そういう意味でも、自分自身がお手本となりながら、チームとしてプロダクトマネジメントに強くなっていくための仕組みを作っていかないといけないなと思っています。

辻尾:

伊藤さんは経験もあって、テクニカルな部分やロジカルな部分もお持ちですが、チーム内でのコミュニケーションだったり、目に見えにくい部分を大切にされているのが素敵だなと思っています。チームを一つにして、自分たちも楽しみながら、ユーザーにしっかり届けていくことってなかなか簡単なことじゃない。PdMが一人で実現できることではないので、チームみんなで一緒にアップデートしていけるようなチームとしての強さを作っていくことが、PdMという仕事の本質なのかもしれないな、と話を聞きながら改めて気が付きました。

チームメンバーとのコミュニケーションで意識していることは?

長谷川:

チームメンバーとのコミュニケーションというところでいうと、僕は自主性を育てることも大切にしていて。というのも、採用の仕組み上、事業への共感が最初はゼロの状態でスタートしてしまうメンバーが多いこともあって、なかなか事業を成長させていくことに対する自主性が育ちにくいんです。チーム全体でサービスや事業に共感することに意識的に力を入れながら、それぞれが自主性をもって仕事に取り組めるような空気作りをしています。

辻尾:

私も、それぞれが自分の意思や意見を発信できるような仕組み作りはすごく意識していますね。あと大切にしているのは、チームメンバーが「プロダクトビジョンにワクワクする」こと。ユーザーにどんなアウトカムがあって、それが広がるとどんな世界になって、どんなアップデートがあるのだろうみたいな部分をそれぞれの言葉でしっかり語り合いながら、メンバーがワクワクできる状態を保っていたいと思っています。

伊藤:

すごくいいですね。僕は、一人ひとりの仕事に心からの興味関心を持って、皆さんのゴールとかモチベーションを理解することを意識しています。ゴールやアウトカムに関しては、共通のドキュメントがあったとしても、一人ひとり認識が異なってしまう部分なので、言葉を尽くしてていねいに伝えたり、相手や場によって伝え方を使い分けながら、皆がしっかり受け止められるように気を付けています。

長谷川:

あとは、基本的には皆フルリモートで仕事をしているので、意識的に交流の機会を作らないと、チームメンバーのコンディションや悩みに気が付きにくいんですよね。なので、最低でも2ヶ月に1度はオフラインで集まる会を開いたり、デザイナーとエンジニア、企画でシャッフルトークをする時間などを作ったりもしています。

辻尾:

大切ですよね。私は、メンバー同士の仕事に関するちょっとした会話や雑談が生まれやすいように、ハドルミーティングで話している内容をSlackに書き込んで、気付いた人がいつでも参加したり、聞いたりできる工夫をしています。一つずつ地道に施策や工夫をしていくことが、より良いコミュニケーションを作るために重要になっていくと思っています。

デザイン組織の中でPdMを務めることのやりがいとは?

長谷川:

NUTIONというデザイン組織でPdMをする中でまず実感しているのは、ほかのデザイン職種からの信頼や協力が得やすいということ。あとは、デザイナーの立場やバックグラウンドを理解した上で仕事ができるので、事業におけるデザインの有用性を説明しやすいという点も、デザイン組織のPdMならではだと思います。

辻尾:

それぞれのバックグラウンドや経験値、価値観をある意味吸収しながら、推進していけるのは面白いところですよね。あとは、ユーザー起点で事業企画を検討するというデザインの考え方に軸足をおけること。例えば、企画が技術の側面から始まっていたとしても、「誰をどんな状態にするか?」というところに立ち戻れるという部分は、デザイン組織だからこそ大切にできることだと思います。

伊藤:

僕自身、いろんなPdMの方と社外含めて出会ってきましたが、優秀でいいプロダクトを作られている方って、ユーザーに対する理解度がめちゃくちゃ高いんですよね。辻尾さんが言うように、ユーザー理解やその構造化という部分はデザイン職能の専門性です。その力を活かしていけることは、PdMとしての大きな強みになると思っています。

PdMとして思う事業活動とデザインの付き合い方とは?

長谷川:

市場的にサービスの価値が機能的価値から情緒的価値にシフトしていっていますよね。だからこそ、これからより一層、ブランド発信、体験設計とかユーザー理解のような、デザインが発揮できる力が、重要な役割になっていくと思っていて。そういったデザインの役割が、事業活動を継続・スケールするための根幹になっていけばいいなと思っています。

伊藤:

デザインと事業活動がどう関わるべきかについては、組織や事業、時代によっても常に変わり続けるものだと思うんですよね。こうあるべきだという理想状態を固定化するのではなく、その都度、今は何が大事なんだろう?とか、お互い何に困っていて何ができるのだろう?っていうようなことを、常に対話し続けられる状態こそが理想なのかなと思います。

辻尾:

そうですよね。そのためには、ビジネス、デザイン、テックと専門領域で分けて考えるのではなく、それぞれが目的に応じて対話を繰り返しながら、お互いのことをちゃんと理解して、発信し合うこと。そういう関係性ができていれば、アウトカムを実現するために必要な最善策を選んでいけるんじゃないかなって思っています。

「はたらいて、笑おう。」を実現するために、デザインの力でできることは?

辻尾:

「はたらいて、笑おう。」っていうグループビジョンがあることで、自分のはたらき方においても、ユーザーのはたらき方においても、「それは “はたらいて、笑おう。”につながるのか?」って常に自問自答できることが、このデザイン組織の面白いところですよね。みんなが会社のビジョン、ミッションに共感しているからこそ、それを実現するために、今の私たちに何ができるのか?と考えていける指針になっているのも、パーソルキャリアならではだなと思います。

長谷川:

今、「はたらいて、笑おう。」を実践できている人でも、環境や状況の変化で、笑えなくなるときもあると思っていて。そんなときでも、キャリアオーナーシップが発揮できれば、また“笑う”ための行動ができるようになると思うんです。
それを実現するために、新しいはたらき方や生き方を提案していくことの重要性は強く感じていますし、僕が携わっている「HiPro Direct」はまさにその選択肢を広げるためのサービスになっていくと思っています。

伊藤:

僕自身、転職の際に、「はたらいて、笑おう。」のポスターに背中を押してもらっていたんですよね。パーソルキャリアに入社した今、これから社会に対して何を還元していきたいかと考えたときに、やっぱり「はたらいて、笑おう。」という言葉が旗印になっています。

長谷川:

「誰にどう笑ってほしいのか」という解像度をより高めていくためにも、ユーザー理解などのデザインの考え方が活きてくるんですよね。実際に体験を作ったり、ブランド実装をしていくことを通して、“はたらく”ことに良い影響を与えていければいいなと思います。

辻尾:

“はたらく”って、単に「お金を得るための仕事」という意味だけじゃなくて、本当にいろんな捉え方や価値観があると思うんです。その“はたらく”ということを再定義しながら、アップデートしていくことがデザインの可能性であり、重要な役割だと思ってます。

伊藤:

お二人の考えにめちゃくちゃ共感です。はたらくっていうこと自体、今現在もものすごく変化してきています。その変化がこれからどうなっていくかなんて分からない。だったら、やっぱり日本や世界にポジティブな変化を起こしたいじゃないですか。そんなときに、やっぱりデザインがもつユーザーや仲間への深い共感や、チームみんなでそれを共創していこうというプロセスは、ポジティブな原動力になるんではないかなと感じています。

PdMとして、これから実現していきたいことは?

長谷川:

お二人の話でもあったように、“はたらく”の選択肢はどんどん増えてきています。でも、世の中の人たちが、そういった新しいはたらき方に出会ったり、機会を得られるチャンスがまだまだ少ないのが現状。「HiPro Direct」を通して、チャンスを増やして選択肢を広げていくことが、僕がPdMとしてこれから実現していきたいことです。

辻尾:

今後、会社という組織や一緒にはたらく仲間は、価値観をもとにしてコミュニティ的に集まる時代が来ると思っています。そこで重要になってくるのは、「なぜそれをするのか?」というWHYの部分。そこに納得感をもって、自分もチームメンバーも語れているかどうか。さらに、その語った先に人が集まってきてくれるかどうか。それが、PdMとしてだけでなく、私自身がはたらいていく上で、長く取り組んでいきたいテーマです。

伊藤:

僕自身は、実は「PdM」みたいな職種にはこだわりはないんですね。その時その時に、事業やチームに必要なことで自分の力を発揮できればいいなと思っていて。だからこそ、ずっと初心を忘れないことと、失敗を恐れずたくさんチャレンジして学び続けることが僕自身の長期的な目標です。それを実現できていれば、その先で事業の成長や社会への価値還元、一緒にはたらく方々の喜びにも繋がっていくんじゃないかなと思っています。

※ 所属・肩書および仕事内容は、取材当時のものです。

執筆:藤岡 優希(White Note Inc.)
編集:重松 佑(Shhh inc. )

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