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非デザイナーとデザイナーの対話から生まれるシナジー。「doda ダイレクト」営業ツールUX改善プロジェクト

NUTIONでは、立ち上げ当初よりデザイン経営を後押しするため事業・組織課題にデザインの力で切り込むことに取り組んできました。

その中でも課題となっていたのが、非デザイナー職のメンバーが、業務の中でいかにデザインを活用していくか。そこでNUTIONとして立ち上げたのが「非デザイナーのデザイン活用プロジェクト」でした。

今回はその第一弾となった、doda ダイレクト(※旧名称「doda Recruiters」)におけるデザイン活用プロジェクトについて主要メンバーに話を聞きました。
※プロジェクト当時のサービス名称は「doda Recruiters」。以降、本記事では「doda ダイレクト」と表記を統一いたします。

  • 津留 拓也 さん

    プロダクト&マーケティング事業本部 カスタマーP&M本部 デザイン部 dodaデザイン第2グループ リードデザイナー

    芸術大学でグラフィックデザインを学び、卒業後はWeb制作会社に就職。コーポレートサイトのデザイン/コーディング等、web制作全般を幅広く経験。 2019年にパーソルキャリア入社。dodaサイト制作業務や広告領域のデザインを担当した後、2021年10月よりdodaアプリのUI/UXデザイナーを務める。

  • 五十嵐 和未 さん

    採用ソリューション事業部 デザイナー

    短大卒業後、キャラクターグッズを取り扱う企業で店頭POPのデザイン制作を経験。
    その後、パーソルキャリアの前身である株式会社学生援護会に入社し、アルバイト情報誌「an」の求人広告のデザインに携わる。株式会社インテリジェンス、パーソルキャリア株式会社へと会社の体制が変遷するなか、一貫して求人広告のデザイン業務に従事。現在は「doda」担当としてデザイン制作を手がけながらAMとしてメンバーのマネジメントも行っている。本プロジェクトでは資料改善のメインデザインを担当。

  • 渡部 翔太 さん

    タレントソーシング事業開発本部 ダイレクトソーシング統括部 ダイレクトソーシング企画部 ダイレクトソーシング企画グループ

    専門卒業後、広告業界にて営業職を経験。2021年10月にパーソルキャリア入社後はダイレクトソーシングセールス部の営業職として従事。2022年4月よりダイレクトソーシング企画グループへ異動し、育成/販促関連の業務を担当。

doda ダイレクト 営業資料改善・運用改善リサーチプロジェクト

NUTIONによる非デザイナーのデザイン活用プロジェクトとして、2023年4月〜9月にかけて、自社のサービス「doda ダイレクト」の営業資料改善デザインと、運用改善リサーチに取り組みました。

doda ダイレクトは、転職サービス「doda」初となるダイレクト・ソーシングサービス。企業が直接転職希望者へスカウトができるサービスです。

本プロジェクトでは、doda ダイレクトの企画メンバーと、部署間をまたがるデザイナーの協業によって進行。デザイナーが起点となり、doda ダイレクト担当者に伴走しながら組織内の事業課題へ取り組んだ事例です。

何か手伝えることはないか?はじまりは、デザイナーからの声がけ

まず、どんな経緯からプロジェクトがスタートしたのでしょうか。

津留:

きっかけはNUTION立ち上げのタイミングで、全社向けに実施したアンケートです。社内に対して「インハウスデザイナーとして何かお手伝いできることはありませんか?」というコミュニケーションを取りました。いろんな部署からお声をいただく中で、doda ダイレクトとマッチングした、というのが始まりですね。

渡部:

doda ダイレクトで、エージェントが使う営業資料が古くなってきていて、扱いにくい、見た目が綺麗ではないという声が以前から上がっていました。長年同じ資料を使っていたので、エージェント個々人でもカスタマイズしていたりと、資料の内容や使い方もバラバラになっていて。2023年12月にサービス名称が「doda ダイレクト」に変わるタイミングに合わせて、デザインの力を借りて資料を改善したいと相談させてもらいました。

津留:

話を聞いて、営業資料のデザインだけじゃなく、実際に資料を利用する人の環境までリサーチして、このツールに関するUX全体の改善をデザインできたらと思いました。

doda ダイレクト側として、どんな期待値がありましたか。

渡部:

営業資料を使う人によってその活用の品質にバラつきが出てしまっていたんです。活用の水準を引き上げるという意味でも、まずは営業資料を統一して、トークスクリプトをそれに沿ったものにすれば、“人”に依存していた品質をベースアップしていけるんじゃないか、という期待がありました。

五十嵐:

ヒアリングさせてもらってわかったんですけど、30名くらいのメンバーがこの資料を使って営業活動をしていると。結構多いですよね。

渡部:

その30名がそれぞれ資料をバラバラに使っているとなると、当然見えない部分で受注率にも影響していたはずです。資料を改善することは、確かに重要な打ち手の一つだという考えに至りました。

ヒアリングを重ねる中で決まったふたつのアウトプット

プロジェクト進行イメージ

プロジェクトスタート後はどのように進めていったのでしょうか。

津留:

基本的にはオンラインで定例ミーティングを開催して、会話しながら現状を把握していきました。

五十嵐:

あとは実際に現場のメンバー6名ぐらいにヒアリングをさせてもらいましたよね。資料を使うエージェントやスーパーバイザー、さらにその上のマネジャー。

津留:

それぞれ違う立場のメンバーへ話を聞くと、やっぱり気づきがあって。人によっては既存資料で十分という人もいれば、もっと改善されたほうがお客さまへ伝わりやすいと思っている人がいたり。考え方やそもそもサービスに対しての理解度も違うというのが見えてきました。そのため資料以外のところにも課題があるかもしれないと考えました。そこで改めて「資料改善」と「リサーチ」という2つのアウトプットに分けたんです。

UX改善のためのリサーチはどんなアウトプットだったのでしょうか。

津留:

具体的には現場の方々のヒアリング内容から、リサーチ結果という形で報告資料をまとめて、渡部さんたちへお渡ししました。

リサーチ資料

津留:

営業資料を改善する以前に、マネジャーやスーパーバイザー、エージェントそれぞれの目指している商談のあり方や提供する顧客体験にギャップがあると、どうしても商談の品質に影響してきます。そこで、社内にあるギャップをまずは可視化するという目的でこのような資料にまとめました。

渡部:

正直最初に相談をした時は、資料の“見栄え”を変えてほしいというのが第一にあったので、運用改善の部分まで言及してくれるとは思っていなくて。これがめちゃくちゃありがたかったです。僕らとしてもきっとそうだろうな、と想像していた課題が明確になったといいますか。マネジャーやスーパーバイザー、エージェントなどそれぞれのレイヤーで見ている方向や観点の違いは今後改善していかなければいけないと改めて実感しました。

デザイナーという以前に、第三者としての意見が役に立つ

資料改善はどのように進めていきましたか?

津留:

既存資料を読み込んで、一つひとつ付箋を貼って課題を洗い出していきました。改めて現場の声を聞くべき部分を明確にしたり、僕らが資料を第三者的な視点で見て自分がお客さまの立場だったらどう思うかを書き出しました。

五十嵐:

既存資料や商談風景の録画を見て感じたのは、資料の内容とお客さまへの説明時のトークの内容がどうリンクしているのかが分かりにくいな、というところでした。お客さまの視点で見ると、「今どの部分の話をしていて、何の説明をしているんだろう」と途中で見失ってしまうかなと。あとは、資料一枚に対する情報量にバラつきがあるので、スムーズに理解しにくいというのが所感でした。

実際にデザインしていく中で、意識していたことはどんなことでしょうか。

五十嵐:

まずは、見る側つまりお客さまにとってその情報が正しく伝わるのか、という視点。そしてもう一つが、お客さまが話を聞きながらサービス内容を理解しやすいように、説明のためのトークと資料内容が一致すること。このふたつを意識していました。そのためにもまずは主要なページのデザインを大きく変えて資料全体の方向性を決めました。その後で、情報が重複しているところ、情報量のバラつきがあるところや理解しにくいところを精査していきました。

資料改善前(左)と資料改善後(右) ※ 記載データはリニューアル当時のものです。

津留:

資料を目にするお客さまがよりスムーズに理解できるように、資料全体の構成を変える提案もしました。

渡部:

普段から資料を使っていると顧客視点が段々とわからなくなってしまっていたので、津留さんや五十嵐さんのように客観的な目線でコメントしてもらえたのは大変助かりました。企業様と商談をさせていただく時に、先方の担当者が決裁権を持っていないというケースが多々あります。そうなった場合にこの資料を持って担当者の方が再度決裁者に説明をするという場面も発生するので、伝わりやすさはかなり重要です。

AでもなくBでもなく、C。両者の意見から生まれる新しい正解

やりとりする中で印象的だったのはどんなところですか。

津留:

お互いに意見を出して、話し合いながら着地点を探していくことができたことです。結局、正解がどこにあるかは未知な部分だったので、デザイナー側だけ、doda ダイレクト側だけと偏った視点にならないようにしました。AかBかじゃなくて、話し合って最終的にはCに落とし込むという進め方が多かったですね。

とても理想的な進め方ですね。

津留:

社内のデザイン活用プロジェクトでもあるので、どうせやるならば、クライアントワークとは違ったやり方をすることに意義があると思いますし、社内だからこそできるコミュニケーションの取り方、進め方ができたらいいなと。僕らデザイナーとしてもある程度やりたいようにやっていい、という前提があるので普段のプロダクトデザインの動きとはまた違った動きをできたのはよかったですね。

五十嵐:

私も進める中で悩んだりしたらもちろんこのプロジェクトメンバーにも相談しましたし、あとは自分の所属にも持ち帰ってアイデアを聞いたり。一番いい選択肢はどれだろう、ということを優先に考えて行動していたように思います。

非デザイナーとデザイナー、コミュニケーションのコツ

津留:

気になっていたんですけど、渡部さんはぶっちゃけ、やりやすかったですか?(笑)。というのも、デザイナー側はコミュニケーションもスムーズに取らせてもらったし、意見も尊重してくれたので、すごくやりやすかったなという印象があって。でもきっと、部署に持ち帰っていただくと、皆さんいろんな意見があると思うので反対意見とか、要望とかを取りまとめるのに苦労されたんじゃないかなって…。

渡部:

いやいや、そんなことはなかったですよ。部内へ持ち帰る前段階のやり取りで、なぜこのデザインなのかという背景や考え方の部分まで皆さんが教えてくれたので、僕自身が納得感のある状態で部署内へ持ち帰れたんですよね。だからマネジャーやスーパーバイザーたちにも同じように説明ができましたし、理解してもらえました。その上で、でもここはこうあるべきだよねというフィードバックをまとめることができました。

津留:

安心しました(笑)。

デザイナーと非デザイナーが対話によってプロジェクトを進めていくのは、一見苦労もありそうですが。

渡部:

僕自身が腹落ちするところまで理解するというのが、大事だったように思います。私は企画職なのでデザインに関してはど素人ですが、質問しやすいミーティングの雰囲気を作ってもらえたので、理解が足りないところは積極的に質問してましたね。

津留:

逆に僕らは、現場でどういう流れで資料が使われているのかが完全にはイメージできないので、トークスクリプトの整備をされている渡部さん、スーパーバイザーのみなさんのご意見を聞いて、落とし込みの段階で資料をさらにアップデートすることができました。

対話がキーポイントだったようですね。改善された資料を運用し始めて、何か反応はありましたか。

渡部:

綺麗になった、使いやすいという好意的な声が多いです。資料改善と同時にトークスクリプトも修正して、運用自体も変更したので統一が図れて、浸透してきたなという印象です。

津留:

運用開始後のアンケートで、「めっちゃ綺麗になりました!ありがとうございます!」みたいなシンプルな言葉が僕は一番嬉しかったですね。ああ本当に喜んでもらえたんだ、という実感が持てました。

五十嵐:

直感的な「使いやすい」という意見はやっぱりうれしいですよね。

インハウスデザイナーとしてどこまで踏み込んでいくのか

プロジェクト全体を通して見えてきたことはありますか?

津留:

デザイナーたちは各々の部署で普段の業務を行いながら、兼務という立ち位置でプロジェクトに関わっているのでどこまで踏み込んでいけばいいんだろうという悩みはありましたね。

五十嵐:

今回のプロジェクトは、doda ダイレクト側の営業資料を改善したいというタイミングと、私たちからお手伝いさせてくださいというタイミングがちょうど合ったから良い取り組みになったと思っています。でも、今後同じような取り組みをしていく中では、私たちデザイナー側から「このデザイン変えた方がいいですよ」という入り方は違うような気がしていて…。プロジェクトのマッチングの仕方というか、どのタイミングで、どんなことをデザインするのかも今後は重要になってくるなと感じています。

津留:

それは僕も思いましたね。僕らの“できること”の前に、まずは“ニーズを把握すること”が大事だなと。現段階では、例えば会社の運営や組織評価に関わる部分など、まだ求められていないところにまで踏み込むのは難しいかなというのが正直なところです。限られたリソースの中でどこまで入り込んでいくのか、これは今後の課題です。

プロジェクトを通じて、デザイナーがビジネスの現場を理解する

デザイナー視点で得られたことはありますか。

津留:

プロジェクトを通して僕らデザイナーがビジネスの現場についてより深く理解できたのはプラスだったと思っています。プロジェクトメンバーの近藤さんは主務でdoda ダイレクトの仕事をしているんですけど、彼が「現場の皆さんがいろいろな悩みを持っていたり、それを改善すべく工夫をしていたり。プロダクト全体を通して、そういう一つひとつを知ることができて良かった」と言っていたのは印象的でした。きっとこのプロジェクトを通してビジネスへの理解を深められたことが、僕らデザイナーにとっても今後の大きな力になっていくのかなと。

五十嵐:

確かに、普段の業務に活きてくる学びになっていますね。

津留:

まだまだ、デザイン=意匠という認識がある中で、リサーチやUX改善だったり、“見栄え”だけじゃないところも気軽に相談してもらえたら、僕らがもっとお手伝いできるんじゃないかなと。そこまで入り込んでいけるのが、インハウスのデザイナーの強み、おもしろさだと思っているので、ぜひ気軽に相談してもらいたいです。

プロジェクトメンバー:(左上)五十嵐、(中上)津留、(右上)渡部、(左下)近藤、(右下)桑本

クレジット情報

Project Lead 津留 拓也

Planning 渡部 翔太

Design 五十嵐 和未

Design 桑本 良輔

Design 近藤 鷹冶

Research 門脇 理沙

※ 所属・肩書および仕事内容は、取材当時のものです。

執筆:藤村 実里(White Note Inc.)
編集:重松 佑(Shhh inc. )

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