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デザイナーの価値が問われる時代、
創造性はどこに宿るのか

生成AIの登場によって「デザイナー」という職能の前提が揺らぐ今、NUTIONでは、より多くの人にデザインをひらく契機として捉え、新たな可能性を模索しています。専門ツールの習熟や、限られた人だけが担ってきたアウトプットの価値が再定義を迫られる中で、デザイナーはどのように変わっていくのでしょうか。

今回は、2025年12月に「デザイナーのキャリアオーナーシップ探索プロジェクト」として実施した「どうなる、デザイナーの未来?〜生成AI時代におけるデザイナーの価値と、未来のキャリアについて考えるワークショップ〜」を起点とした鼎談です。パーソルキャリアのゼネラルマネジャー・藤井 烈尚さんと、設計を担ったデザインストラテジストの小田 裕和さん、ファシリテーターの押田 一平さんに話を聞きました。

  • 小田 裕和 さん

    デザインストラテジスト

    「考えたり作りたくなる気持ちを孵化させる、場や道具のデザイン」をテーマに、事業開発から組織開発まで、幅広いプロジェクトのコンサルテーションやファシリテーションに取り組む。主な著書に『リサーチ・ドリブン・イノベーション-「問い」を起点にアイデアを探究する』(共著・翔泳社)『アイデアが実り続ける「場」のデザイン 新規事業が生まれる組織をつくる6つのアプローチ』(翔泳社)がある。2026年4月より、立命館大学デザイン・アート学部准教授。

  • 押田 一平 さん

    ファシリテーター/サービスデザイナー

    デザイン会社でWebサイト開発やブランディングなどの業務を経験後、人材サービス企業にて転職サービスのUXデザインおよびサービスデザインを担当。
    デザイン実践の対象を組織や学習へと広げるため、2022年にMIMIGURIへ参画。現在は、事業開発から組織開発まで、さまざまなプロジェクトでコンサルテーションやファシリテーションを行っている。横浜在住。

  • 藤井 烈尚 さん

    クライアントプロダクト本部 クライアントプロダクトデザイン部 ゼネラルマネジャー

    学生時代にグラフィックデザインや3Dを学び、コンシューマーゲームの開発現場に飛び込む。その後、スタートアップから一部上場企業までデザイン組織を4度立ち上げ。2019年10月パーソルキャリアに入社し、5度目のデザイン組織づくりに従事。2022年4月にデザイン推進統括部(NUTION)を組成。2025年10月よりクライアントプロダクトデザイン部 ゼネラルマネジャー。

生成AI × デザイナーの未来を、スキルではなく「意味づけ」から考える

まずはじめに、昨年実施された「生成AI × デザイナーの未来」のワークショップを振り返ります。どんな意図で企画したのでしょうか。

左から、クライアントプロダクト本部 藤井 烈尚、デザインストラテジスト 小田 裕和さん、ファシリテーター/サービスデザイナー 押田 一平さん

藤井:

きっかけは、デザイナーのはたらき方がこの先かなり変わるだろうという予感でした。「キャリア迷子」という言葉は、NUTIONを立ち上げた頃からメンバーとの会話でよく出ていたんですが、そこに生成AIが重なることで、不安や迷いは今後さらに増えるだろうと。変化が来てから対応するのではなく、早い段階で自らのキャリアを考える場を用意することで、組織としてメンバーをサポートしていきたいという発想でした。

小田:

ワークショップの設計でベースにしたのは、「ジョブクラフティング」の考え方です。主体的に業務の意味づけや捉え方を工夫し、自分なりに仕事のあり方そのものをクラフトしていくものだという発想ですね。

デザインという領域はここ数年で定義がどんどん拡張してきた一方、広がりすぎて曖昧になっている側面もあり。さらには、生成AIによって「作る」前提まで変わってきている。こうした状況下で、次々と登場するツールにただ振り回されているだけだと、自分のクリエイションを見失いやすくなってしまいます。

そのような背景からワークショップへどう落とし込んだのでしょうか。

小田:

今回はAIの活用法だけを考えるのではなく、参加者の皆さんが自分はどんな時に仕事に手応えを感じ、逆にどんな時はやりがいを失いやすいのかを見つめ直す設計にしました。仕事の意味づけが「深まる方向」と「希薄化する方向」を整理し、それに対するフィードバックから仕事の捉え方を再考してもらう構成です。

藤井:

AIの活用法そのものというよりは、今の時代の変化の中で、自己認識を整える場でしたね。

ワークショップでは、まず参加者が「自分の仕事の意味づけが深まった経験・希薄化した経験」を振り返った(サンプル:画像下)。その情報を元に、生成AIで「デザイナー像タイプ」「キャラクターカード」を出力し(サンプル:画像上)、お互いに共有し合った

小田:

そうですね。結局のところ、デザイナーが自身の仕事のプロセスにどう意味づけをするかという主体性がないと、デザインはデザイン的なものではなくなっていくように思います。だからこそ、起点として「自分にとっての意味」を扱う必要がありました。藤井さんは実際にワークショップに参加してみてどのように受け止めましたか。

藤井:

正直に言うと、参加している最中はどうプロンプトを書くかで必死でした(笑)。ただ、後から振り返ると、「自分はこういう場面では夢中になれるんだ」とか「逆に、こういう場面では無力感を感じやすいんだ」と、メタ認知が深まりました。

小田:

藤井さんは、どんなときに夢中になりますか?

藤井:

僕は「共同体を耕す」という感覚に強く意味を感じるタイプでした。以前から小田さんたちと話していた中で、デザイン組織を「庭」、自分たちを「庭師」に例えることがありましたよね。僕自身も、多様な人が関わり、いろんなものが育つ環境をつくること自体に面白さと意味を感じますね。

小田:

なるほど。ワークショップで印象的だったのは、藤井さんは「深まる方向」も「希薄化する方向」も、チームやコミュニティといった「関係性への一体化」が軸になっていたことです。庭はいろんな生き物が来て、変化が起きて、多様性が育まれるもの。そこで起こる変化を分かち合って楽しむスタンスが強いからこそ、関係が断絶されたり、積み上げたものが壊れたりすると、強い無力感が生まれやすいんだと思います。

藤井:

その話を聞いて腑に落ちたんです。生成AIの登場でデザインの前提が変わる今、自分の仕事の本質は「デザイナー」という名前を守ることより、生き生きした文化や環境をつくり続けることだと。状況が変われば、庭の形も変わりますもんね。もしかしたら「デザイン」や「デザイナー」という言葉自体は、なくなってもいいのかもしれません。たとえば「クリエイティブ」や「クリエイター」に置き換えたほうがいいのではないか、とか。

所属も立場も異なるメンバーが「同じ景色」を見るための鍵とは

NUTIONが立ち上がってから数年が経ちましたが、藤井さんには現在地はどう見えていますか。

藤井:

「随分立派になったな」と感じます(笑)。僕が入社した2019年当時は、組織にデザイナー同士の横のつながりは希薄だったし、上流工程にデザイナーが関わっていける領域も限定的でした。NUTIONを立ち上げたことで、デザイナー同士のつながりも生まれ、経営とも接続された組織となりました。ただ、一方で危機感もあります。会社から見たデザイナー像は、どうしても「高価なツールや長時間の習熟を必要とする専門職」になりがちだからです。

その見られ方がなぜ危機感につながるのでしょうか。

藤井:

これからは、一定の品質のものを出力するだけなら、必ずしも高価なツールや長時間の習熟が必要ではなくなり、会社にいる誰もがある程度良いアウトプットができる世界がくる可能性がある。そうなった時にNUTIONはデザイン組織としてどうあるべきか。いま大事なのは「正解を決めること」より、「変化に備えて準備しておくこと」だと思っています。

小田:

多くの企業で「顧客にとっての価値を探究すること」の重要性は当たり前に語られるようになりました。その中で、デザイン組織の役割も自然と広がってきましたが、デザインの現場で起きていることを「デザインの言葉」でしか語れていない問題があると感じています。

押田:

僕も組織開発の現場でデザインの専門用語はほとんど使いません。でもやっていることは、同じ景色を見られるようにすること、よりよい状態を一緒につくることです。サービスデザインの方法論をプロダクトに向けるのか、組織や共同体に向けるのかの違いでしかないと感じることも多い。営業の人が顧客を本気で考えている時、その顧客視点の姿勢は、デザイン的な態度に近いものがあると思っています。

小田:

本当にそうですね。デザイナーがデザイナーとして培ってきた語彙や視点にはオリジナリティがあるので、それ自体は大事です。けれど、経営、人事、営業、エンジニアなど、別の論理で動く人たちと共通で語れる言葉へ翻訳していく「言葉のデザイン」が、影響力を持つための鍵になり得ると思っています。さらに、これから重要なのは、組織の中で共有される言葉や振る舞い、価値判断の様式を形づくっていくこと、いわば「ディスコースのデザイン」です。デザイン組織が集団特有の言葉や行動をどう耕し直すかは今後重要になると思います。

ただ、職種の境界をまたぐのは、実際には難しさもあると思います。どうすれば所属も立場も異なる方々と「同じ景色」を見られるようになると考えていますか。

藤井:

その第一歩は、他職種の現場ですでに体現されている価値を、僕らデザイナーが「それこそがクリエイティブなんだ」と気づくことから始まると思っています。例えばCS(カスタマーサクセス)の方の同行をすると、相手の不安を先回りして解消するような、非常に高度な振る舞いに圧倒されます。デザイナーが教える立場ではなく、現場の皆さんが当たり前にやっていることの中に、クリエイティブの正体を見出させてもらう。そんな感覚ですね。

なので「デザイン」という言葉の枠を外して、「クリエイティブ」と呼んだほうが、みんなが同じ景色を見られるんじゃないかと思うんです。「デザイン」だとどうしても専門家の領域と捉えられがちですが、「クリエイティブ」なら職種を問わず誰もが持っている創造性を肯定し合える。

そのうえで、デザインをやってきた人間は、周囲のクリエイティブを少し先導したり熱量を上げたりする。ある種「伝道師」的な立ち位置で動けると理想的だな、なんて思っています。

押田:

まさにハードルを下げるのが僕らの役割ですね。「全ての人がデザイナーだ」なんて大げさに言うのではなく、「あなたが、ついこだわってしまうことは何ですか?」という小さな問いから、お互いの創造性の断片を面白がり合う。その積み重ねが、組織の文化を耕していくんだと思います。

小田:

むしろここは強調したいんですが、「みんなで集まろうよ」から始まるデザインや共創って、けっこう失敗するんですよ(笑)。「みんなで集まってデザインすること」が目的になると、途端にそのプロセスからは本来向き合うべき課題や問いが抜け落ちてしまう。最初から「共創」を目的化するとズレやすいんです。

分業を強める要因は、組織が向き合っている課題がどんどん小さく、答えが見えやすいものになっているからです。最初から答えが分かっているなら分業の方が効率がいいですからね。だからこそ、同じ景色を見るためには、組織の中だけでは解けない「一歩大きな問い」を置くことが重要です。違う職種の人たちが一緒に悩まざるを得ない問いをどう設定できるかですね。

藤井:

違う立場の人たちが一緒に考える状況をつくるのは大事ですよね。

小田:

もう一つ大事なのは、共創は本来苦しいものだということです。違う人同士が本気で向き合えば、当然しんどい。だから、それを乗り越えられるだけの日常的な関係性が必要になる。コロナ以降、無目的な場が減り、雑談から問いが立ち上がる余白がなくなりました。なんとなく話しているうちに見えてくるものを、どう日常に取り戻すか。これは本質的な論点です。

藤井:

NUTIONでも、コロナ禍から意識的に雑談の場をつくってきました。最近も管理職や近いメンバーで一週間を振り返る時間の中に雑談や自己開示の時間を設けていたりと、意識的に無目的な時間を確保しています。

デザイン思考の「失敗」から見えた、日常に浸透する学習の価値

デザイン思考は、イノベーションの手法として広まった一方で、期待通り機能しなかった面もありますよね。その中で何が残ったのでしょうか。

小田:

まず、イノベーションにつながらなかった理由は、かなり明確だと思っています。多くの組織で「デザイン思考研修をやらせよう」と言うけれど、評価する側はやっていない。評価軸が変わらないまま現場だけにアイデア出しを求めても、イノベーションになるはずがないんです。なので、「デザイン思考が失敗した」というより、制度や評価の側が変わらないまま導入されたというのが大きい。

藤井:

組織の体制や仕組みづくりが変化に追いついていないということですね。

小田:

そうですね。その上で意味があったのは、デザインを「学習活動」として捉える視点が広がったことです。デザインのプロセスを通して、自分の価値観も揺れ、自分自身も書き換わっていく。この「自分たち自身が学習していく営み」としてのデザインが、組織の日常の中に浸透していくことに価値があります。

ワークショップはどこまでいってもハレの場、つまり非日常です。でも本当に大事なのは、その場で感じたことが翌日以降のケの日常にどう接続され、「あれ、なんかいつもと違って見える」という違和感が生まれるか。そこまで設計されているかが、場づくりの質を分けると思います。

藤井:

デザインを「学習活動」として捉えるという点では、私たちの組織では「UXer」という取り組みを推進しています。目的は、UXリサーチを専門スキルから、プロダクト開発に携わる誰もが日常的に実践できる「組織の標準装備」へと変えていくことですね。2025年度は生成AIを積極的に活用して「軽やかさ」を標語に学習回数の最大化と、体験設計を重視した成果への接続を目指してきました。そんな取り組みの中で、専門スキルを民主化していく流れを、まさに実感していますね。

人がつくることの意味を軸に、これからのデザインを考える

最後に、これからのデザイナー/デザインの可能性をどう捉えているかを皆さんに伺いたいです。

小田:

僕は、デザインの可能性は広がるというより、もともとやってきたことの核心がより鮮明になるのではないかと思っています。デザインは本質的にアイデンティティに関わる営みです。プロダクトを通じて、使う人自身が「いいものを使えている自分」を感じられることもそうだし、組織の中ではたらく一人ひとりが、「自分も価値をつくれる」と感じられることもそう。アイデンティティへのエンパワーメントですね。

AIが進化するほど、AIで代替できることを人間がやる意味は薄れていく。だからこそ、最後に重要になるのは「自分がここにいてよかった」と感じられる瞬間をどれだけつくれるか。人間であることの価値を最大化することが、これからのデザインの役割だと思います。

藤井:

僕個人は時々、AGIやロボティクスの社会実装以降の未来を考えており、その頃にはいわゆる専門職としてのデザイナーの領域は狭まっていくと考えています。その一方で、自分は何を作りたいのか、何にこだわりたいのかという個人の偏愛や衝動はむしろ重要になる。個人のクリエイティブ欲を起点にした表現や実践は、すごく面白い領域として広がっていく気がします。

組織としては荒波を楽しんで乗り越えられる組織でありたい。そのために、変化を早めに知って準備しておくことが過度なストレスを避ける組織運営のコツだと思っています。

押田:

僕は生成AIや技術の進歩によって、ある意味では本当にあらゆる人がデザイナーになっていく時代が来ると思っています。そういう意味では藤井さんと同じく、人々の衝動や創造性こそがますます重要になってくると感じています。

そうなると、デザイナーの役割も変わってくると思うんですよね。自分たちが何かをつくるというより、それぞれの創造性を発揮できるような、みんながデザインできる環境や仕組みをつくっていく、そういう仕事になっていくんじゃないかと。

デザイナーが代わりに作るのではなく、一人ひとりがもともと持っているクリエイティビティを引き出していく。これからのデザイン組織の可能性は、まさにそこにあると思います。

3名が薦める、これからのデザインと組織を考える本

デザインの役割が専門領域の枠を超えて広がりつつある今、創造性や学び、組織のあり方をどう捉え直すかは、ますます重要なテーマになっています。そんな問いをさらに深めるために、鼎談に参加した3名それぞれに、このテーマに関心のある方へ薦めたい一冊を挙げてもらいました。

※ 所属・肩書および仕事内容は、取材当時のものです。

編集:重松 佑(Shhh inc.)
撮影:中杉 寛子 

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