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採用活動を成功へ導く新たな“物差し”を提供。「HR forecaster」開発プロジェクト。

Service :
HR forecaster
Launch :
November 2022

(プロジェクト概要) Outline

dodaが蓄積してきた100万件以上の転職データを活用した新サービスを開発。

“求人要件”。それは、「社会人経験年数」や「職種」「スキル・資格」など、企業が採用したいと考える人材の各種条件をリストにしたものであり、採用活動をスムーズに行うための重要な指標です。しかし、この”求人要件”の作成は、採用担当者が自ら培ってきたノウハウや経験をもとに書き起こしたり、他社の求人票を参考にするなど手探りで行われることが多く、妥当性の低さや効率の悪さが多くの企業で課題となっていました。

このような求人要件作成業務をデータドリブンで効率化しながら、採用成功率の向上、採用期間の短縮に寄与することを目指して開発されたのが「HR forecaster」です。転職情報サイト「doda」が蓄積してきた100万件以上もの転職データから生成した統計データを活用。利用企業が自ら最適な採用ターゲットを無料で作成することができるサービスは、正式リリースから1年ほどで導入企業1,500社超(2023年1月末現在)を達成。HRアワード2022優秀賞や第7回HRテクノロジー大賞イノベーション賞も受賞したHR forecasterは、どのようにして開発されたのか。そのプロセスをご紹介します。

(プロジェクトの背景) Background

採用企業とパーソルキャリア社内。双方が抱えていた課題が、サービス構想の起点となった。

本プロジェクトの始まりは、採用企業とパーソルキャリアの法人営業の双方が共通とも言える課題を抱えていたことにありました。

採用企業の課題:

企業の採用担当者は、求人広告を掲載している人材会社などから採用マーケットに関する情報を集め、各現場や経営陣に対してレポートを行っています。しかしそれらの情報はあくまで個人が限られたネットワークの中から収集した断片的なものであり、マーケット全体の実情を正確に捉えたものではありませんでした。そして適切な定量データが得られないことにより、マーケットに即した最適な採用ターゲットの設定が困難となり、採用活動の長期化や採用成功率の低迷などを引き起こしていました。

パーソルキャリアの法人営業の課題:

パーソルキャリアの法人営業には、企業の採用担当者に正しいマーケット情報を提供しながら採用活動を成功に導く役割があります。しかし、法人営業にとっても定量的なマーケットの情報を得る方法は限られていました。経験豊富な営業担当がそれぞれの知見をもとに企業様をリードしていましたが、属人性が高く、標準化が難しい業務となっていました。

dodaが蓄積してきた膨大な転職データを適切な形で採用企業に開放することで、これらの課題を解決すること。採用活動を成功へ導く新たな “物差し(=基準)”となることを目指して、HR forecasterの開発が進められました。

(プロジェクトのプロセス) Process

α版、β版を法人顧客へ開放。ヒアリングとブラッシュアップを重ね、正式版のリリースへ。

当初のメンバーは、企画者1名、デザイナー1名、エンジニア1名という最少人数でのスタートでした。

デザイナーは、サービスデザインの検討段階からプロジェクトに参加。若手デザイナーがメインで担当し、UXデザイン5段階モデルのフローに沿って工程ごとに中堅デザイナーが参画。緊密に連携しながら制作を進めていきました。デザインの方向性が固まって以降は、機能追加に伴うUI/UXの検討とデザイン、サービスのグロースに向けて既存機能やレイアウトなどの改善を行っていきました。

    • 2020年1月:プロジェクトスタート

    1. デザインスプリントにより全体コンセプトを策定
    2. コンセプトの詳細企画
    3. デザインスプリントによりデザインイメージを確定
    4. サービスブループリントを作成し、法人・企業様のフローと課題を洗い出し
    5. サービス概要の設計
    6. 情報の優先度や情報を見せる画面設計などの機能についてワークショップにより整理
    7. デザインワイヤーフレームの設計
    8. データの集積など詳細仕様を確定
    9. 開発
    • 2021年2月:α版リリース

    パーソルキャリア社内の法人営業部門と一部の法人・企業様(50社程度)を対象にα版をリリース。実際に使用していただく中で、分かりにくさや使いにくさを感じるポイントを洗い出し、情報設計とデザインをブラッシュアップ。ユーザー体験の改善を重ねていきました。

    • 2021年8月:β版リリース

    dodaの人材紹介サービスを利用している法人・企業様(700社以上)にβ版を開放。ヒアリングを重ね、さらなるブラッシュアップを実施しました。β版を利用した企業の88%から、「今後も活用していきたい」という回答をいただきました

    ※β版利用企業へアンケート調査を実施 (実施期間:2021/10/11~10/15、送付数:618、回答数:136)

    • 2021年11 月:正式版リリース

    正式版リリース後も継続してVOC分析を行いながら、ユーザーの声をもとに随時改修を実行。また、企画・デザイナー・エンジニアからなる複数のチームを組織して、新機能の開発も積極的に行っています。

    採用成功までのフローやそれぞれのフェーズにおけるインサイト、課題感など、ユーザーの体験を「サービスブループリント」などの資料としてまとめ、チーム内でシェア。ユーザーの本質的なコンテキストやHR forecasterが持つブランドの世界観を全メンバーが理解すると共に、新たに参加するメンバーに対する意識共有の効率化を図っています。

    (プロジェクトの詳細) Details

    アンケート、インタビュー、VOC。ユーザーの声に徹底して向き合い、サービス開発を推進。

    採用活動の新たな物差しとなるサービスを開発するにあたり、ポイントとなったのが「採用ターゲットの妥当性」をどのように可視化して伝えるか、という点でした。

    企業は採用したい人材について年収やスキルなどさまざまな視点から条件を設定します。しかし、企業側が希望する条件と採用マーケットの相場感には相違がある場合が多く、そのギャップが原因となって採用活動の難しさにつながっていたのです。

    プロジェクトメンバーは議論を重ね、dodaが蓄積してきた100万件以上のデータから生成された統計データをもとに、次の5つのデータの可視化を決定。

    1. ターゲットの平均年収
    2. ターゲットに該当する候補者の数
    3. 類似した条件で採用したときにかかる日数
    4. 職種の求人倍率
    5. 競合他社の類似求人数

    これらのデータをもとに総合評価という形で採用の「難易度」を提示することで、これが物差しとなり企業は採用条件が妥当なのかを判断することが可能となります。

    また、データを効果的に伝えるために、「ユーザーのリアルな声に徹底して向き合うこと」を重視してサービス開発を進めました。

    アンケート調査・デプスインタビュー

    定量的なアンケート調査と共に、ユーザーへのデプスインタビューを実施。実際に操作した時の使用感や課題感などを細かくヒアリングしていきました。

    アクションログの解析

    アクションログを解析し、ユーザーが想定した挙動をしているのか、つまづいている箇所はどこにあるのかなどを分析し、小さなブラッシュアップを重ねることでユーザービリティを上げていきました。

    VOC(Voice Of Customer:顧客の声)分析

    リリース後には、VOC分析を実施。定例会議の際に一社取り上げて、その詳細をレビュー。企画、デザイナー、エンジニア全員で情報を共有しそれぞれの立場、職能、経験からくる知見をもとに議論を重ね、チーム内の意識共有を図っていきました。

    可能な限り最大解像度で「ユーザーが何に悩んでいるのか、何を求めているのか」を理解した上で、自分たちが提供するサービスはどうあるべきかを考え、実現するべき機能やUIを明確化していきました。ユーザーリサーチという「マーケットインの視点」とHR forecasterのあるべき姿という「プロダクトアウトの視点」。両方の視点を持ち合わせながらサービス開発を行っていきました。

    UIデザインは、分かりやすさと操作のしやすさを徹底的に追求。

    ex 01:ユーザーの異なる二種類のアプリ

    HR forecasterには、「法人・企業様向けアプリ」と「パーソルキャリアのエージェント向けアプリ」があります。法人・企業様とエージェントそれぞれがアプリを閲覧しながらコミュニケーションをとる事を想定し、異なる機能を持ちながらも同一の画面を見ているようなUIを構築しています。

    ex 02:求人条件の選択入力画面

    2021年2月のα版では職種の小分類を設けずに約150職種の記載でリリース。その後のユーザーインタビューにより小分類を求める声が多数上がり、職種だけで約560種類、資格は約1,600種類もの選択肢を記載するべくリニューアルを実施しました。

    膨大かつ多様な情報を分かりやすいカテゴライズとUIで表示し、ユーザーがストレスなく入力できることを目指して、企画、エンジニアと共に話し合いながらプロトタイプを作成。何度も検証と試行錯誤を重ね、細部まで丁寧にデザインすることで、一歩一歩着実に理想とするUIを作り上げていきました。

    (実績と効果) Impact

    サービスリリース後、約1年で1,500社もの企業様が導入。

    • 導入社数

      1,500 社以上

    • 累計採用ターゲット作成数

      3 万件以上(2023年1月末時点)

    (受賞情報) Awards

    (メンバーからのコメント) Voice

    HR forecasterは、「大事なことに取り組んでいる」という実感があります。企業にとって「働いてくれる人が見つからない」ということは大きな問題で、これを長い間解決できないでいる採用担当者が全国にいらっしゃいます。私は昔から「アプリで世界を変えられたら楽しいな」と思っていました。なので、これからもユーザーのみなさんの苦悩の日々が、「そんなこともあったっけ」になるような世界を目指して仕事に取り組んでいきたいと思っています。

    ※ 島津は退職していますが、本人の同意を得て、掲載を継続しています。

    島津 皆実 さん

    私はグロースフェーズから新機能を担当するUI/UXデザイナーとして参加しているのですが、デザイナー一人ひとりが主体性を持って行動できる、判断できるという環境がとても嬉しかったです。それはきっとプロジェクト全体でサービスに対する深い意識共有ができていて、デザインチームとしてもブランドの世界観を構築できていたから。ある程度のルールがベースとしてあったので途中から参加したデザイナーも、一人ひとりが主体的に考え、判断して、実行するという経験ができたのかなと思っています。

    カスタマープロダクト本部 デザイン統括部 デザイン2部 HiProデザイングループ サブマネジャー

    成田 洋輔 さん

    いいサービスを作るには、いい組織やチームが必要ですし、そこにいいカルチャーがあって、そこで一人ひとりがチャレンジして成長していくことが重要です。最初は企画1名、デザイナー1名、エンジニア1名で始めたプロジェクトが、今では25名ほどの組織になっていますが、これからも自由に、一人ひとりがパフォーマンスを十分に発揮できるようにしていきたいです。そして、HR forecasterの企画、デザイナー、エンジニア、カスタマーサポート、マーケの全てのプロジェクトメンバーで、より良いサービスを創っていけるよう精進します。

    クライアントP&M本部 プロダクト統括部 HR_Forecaster部 ゼネラルマネジャー

    石川 悟 さん

    (クレジット情報) Credit

    Service Owner
    石川 悟
    UI/UX Designer
    島津 皆実
    UI/UX Designer
    成田 洋輔

    (プロジェクト情報) Information

    ※ 所属・肩書および仕事内容は、取材当時のものです。

    執筆:宗像 誠也(White Note Inc. )
    編集:重松 佑(Shhh inc. )

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