
NUTIONでは、プロダクト開発においてデザイナーも上流工程から関わり、PdM(プロダクトマネジャー)、エンジニアとともに共創するスタイルで取り組んでいます。さらによりよい共創の形を模索している同組織ですが、今の形に至るまでにどのような課題があり、どんな取り組みを行うことで変化してきたのか。今回は、ともに「doda ダイレクト」のプロダクトを担当する3人による鼎談です。PdM・真崎さんにインタビュアーを担当してもらい、PdM・椙浦(すぎうら)さん、デザイナー・近藤さんに話を聞きました。
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真崎 豪太 さん
クライアントプロダクト本部 dodaスカウトプロダクト部 ゼネラルマネジャー
スタートアップや大手企業など5社でPdMを経験。2024年にパーソルキャリアへ入社。現在はタレントソーシング事業開発本部にて、「doda ダイレクト」のプロダクトマネジメントをゼネラルマネジャーとして牽引。
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椙浦 弘之 さん
クライアントプロダクト本部 dodaスカウトプロダクト部 マネジャー
事業会社など複数の企業でWebディレクションやPdMを経験。2024年にパーソルキャリアへ入社。現在はタレントソーシング事業開発本部にて、「doda ダイレクト」開発をPdMとして従事。
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近藤 鷹冶 さん
クライアントプロダクト本部 クライアントサービスデザイン部 リードデザイナー
大学ではデータサイエンスを専攻。自然言語処理等の学びを活かしSIerやシステムエンジニアへの就職をめざしていたが、社会課題の解決を意識するようになったことでデザイナーへと志望を変更。独学でデザインの学びを重ね、2021年パーソルキャリアに新卒入社。入社後はdodaでデザイン業務に従事。2022年9月よりdoda ダイレクトのUI/UXデザインを担当している。
職能を超えた、プロダクト共創を

左から、 椙浦 弘之、近藤 鷹冶、真崎 豪太
椙浦:
私が入社当時に感じていた課題は、良くも悪くも縦割りで役割分担がきっちりしていたことでした。デザイナー、PdM、エンジニアそれぞれが、プロフェッショナルとして自分の役割のみに集中して作業している感じですね。そもそもどんなプロダクトを作りどんなターゲットに届けていくのか、最初に職能間で共有できていないまま進めてしまっていた印象があって。もっとみんなで上流から議論してプロダクト共創するスタイルに変えていけないかと考えていました。
真崎:
近藤さんは2021年に入社ですが、当時から分業して進めていくような雰囲気はありましたか?
近藤:
その空気感はありましたね。デザイナー目線でも、PdMから依頼を受ける際、気を遣われている感じがしていました(笑)。依頼についての企画書がきちんと用意された状態でミーティングが組まれ、「いつまでに作ることは可能ですか?」とお伺いを立てられるような形だったので。もっとライトに相談してもらい、キャッチボールしながら企画をブラッシュアップしていけたらいいなと思っていました。
椙浦:
外部に依頼するような精度の企画書でしたよね(笑)。近藤さんの言うようにもっとラフにディスカッションしながら、こういうアウトプットがいいよね、じゃあこの資料が必要だから作ろうという風にできるといいなって。
近藤:
職能で役割をきっちり区切ってしまうのは、もったいないですもんね。UIデザイナーだからといってUIデザインだけになってしまうと視野が狭くなってしまうので、手を動かしてデザインする工程よりも、もっと手前の段階から関わっていくようにできたらなって。1つのプロダクトを、みんなで同じ方向を向いていいモノにしていこうとする雰囲気はあったので、エンジニアやPdMと共にプロダクトを作っていく仲間として取り組む、そういう意識に変えて行きたいという気持ちでした。
「ユーザーに何を届けるか」から、一緒に考える
真崎:
どのように、みんなでプロダクト共創を進めていく形に変えていったのでしょうか?

椙浦:
こちらでアウトプットのイメージを固めてからではなく、もっと上流から相談することが重要だと考えました。例えばUIデザイナーにデザインだけ依頼するのではなく、「ユーザーにどんなプロダクトを届けるか」から一緒に考えていくことにしたんです。まずはアイデアをPdMが持ち寄り、デザイナーからインターフェースのデザイン案をもらって、それを練り上げていく。
真崎:
いいですね。日々のコミュニケーションの取り方においては、どう変更したんですか?
椙浦:
スクラム開発にあたり、2週に1回、何をどう作っていくかをPdM、エンジニア、デザイナーで話し合う機会を設けています。そこで、まずはラフの状態で持っていってみて、エンジニアやデザイナーに意見や感想を聞く進め方に変えてみたんです。次の定例会議までに試しにアイデアを形にしてもらい、その振り返りを行いつつ次回に向けてどうするかを話し合うという流れですね。
真崎:
なるほど。進め方を変えることに反発が出てくる心配などはなかったですか?
椙浦:
実は以前から、もっと手前から相談してほしいという雰囲気を感じていたところがあったんです。
真崎:
近藤さん、デザイナーとして実際のところはどうでした?(笑)。
近藤:
制作を進める中で、そもそも何をやりたいのか?といった質問をデザイナーから投げかけることが多かったので、そこから感じ取ってもらえたのだと思います(笑)。
真崎:
よりよくしていきたいという前のめりな気持ちが、滲み出てしまっていたんですね。ただ仕事を待っているのではなく、一緒にやろうとしてくれていると感じられます。
椙浦:
そうですね。前提として、デザイナーに対してプロフェッショナルとしてリスペクトを持っているので、手を動かしてもらうところは信頼してお任せする。一方、もっと早くから相談することは、必要なプロセスなのだと考えを切り替えることができました。デザイナーからしても、きっと全体像を理解できていた方が最終的なアウトプットのイメージがより膨らむだろうなとも思えましたね。
真崎:
進め方を変えることは、きっと簡単なことばかりではなかったと思います。苦労した部分はありましたか?
椙浦:
最初のうちは、エンジニアやデザイナーの意見をなかなか引き出せないという声がPdMからありました。でもそれはデザイナー側からすると、すでに開発に向けて話が進み始めていたり、制作が始まっている状況だった場合、そもそもどんな目的で作るのかといった質問はしづらいわけですよね。どんどん意見をくださいと言われても迷ってしまう。しかしその状況が、PdMの目にはデザイナーが協力的じゃないように映ってしまうこともあったようでした。
真崎:
お互いにいい形を模索したいと思いながらも、すれ違ってしまうというか。
椙浦:
そうなんです。だから、話しやすい雰囲気づくりや伝え方の基礎づくりを、みんなで繰り返し実践しながら探っていくしかないという話をしていました。
真崎:
でも、一緒に作っていこうとするからこそ生まれる、とても大切な摩擦にも思えますね。

プロダクトの質向上へ、「チームで」向き合う
真崎:
新しい取り組みを進める中で、成果は出てきていますか?
椙浦:
はい、共創の雰囲気が作れてきていると感じます。定期的な振り返りの場でも、これまでは「PdMの調査が足りなかった」といった、自分たちの役割のみに発言内容が閉じてしまいがちだったんです。でも最近では、「この部分はより早期にデザイナーを巻き込んだ方が進んだのでは」といった、チームを主語とした改善案が多く出てくるようになって。
真崎:
変化が生まれ始めていますね。
椙浦:
そうなんです。メンバー、一人ひとりの視点や視座が変わってきていて、以前は「企画の詳細はPdMに聞かないと分からない」という状態だったところから、デザイナーでもエンジニアでも、誰でも答えられるようになってきました。
真崎:
素晴らしいですね、チームで共通認識をしっかり持てるようになってきている。開発するプロダクトの質も変わってきていますか?
椙浦:
はい、少しずついい方向へ変化している手応えがあります。というのも、チームメンバーの「プロダクトをもっと良くしていこう」という意識がいっそう強まったのを感じていて。
近藤:
そうなんですよね。毎朝30分ほど実施している進捗共有会でも、今までは作業確認が主だったところから、いろんな意見がエンジニア、PdM、デザイナーから出るようになりましたよね。これまでは「1回決めたからこれでいきましょう」となりがちだった場面でも、「ここをもっと変えたいんですけどどう思いますか?」といった会話がすごく増えてきていて。
椙浦:
あるときは、「別の案件の中で出てきたアイデアを使ってみるのはどうか」という話が出てきたこともありましたね。
近藤:
プロジェクトの最初からみんなで共有しているからこそ、ナレッジが無駄にならず、過去のアイデアも財産として次に繋がっていますよね。
椙浦:
このままチームみんなでやっていこうという雰囲気で進めていけたら、よりよいアウトプットが生み出せるのではと期待が膨らみますし、この先の開発がすごく楽しみです。
デザイナーの活躍の幅、成長の可能性も広がった
真崎:
デザイナーとして、上流から関われるようになったことはどう捉えていますか?
近藤:
とてもポジティブですね。今までより、高い次元からサービス全体を考えることができていますから。doda ダイレクトを始めとした転職先と出会うことを目的としたサービスでは、内定承諾を機に利用しなくなる企業やユーザーもいます。その中で、さらに提供できる価値はないか、既存のサービス範囲にとらわれずに考えることは重要だと思っていて。でもそのためには目線を上げ視野を広げてインプットしておかないと、デザイナーとして貢献できることや思考の幅も狭くなってしまうと思っています。

真崎:
やりがいや面白さはどうでしょう?
近藤:
基本的なメインの業務はインターフェイスやプロダクト画面作成ですが、視座を上げていくことで、UIデザイナーにとってのプロダクトづくりの面白さも増えていくと思っているんです。ユーザーがどういう悩みを抱えていて、それをどう解決していくべきなのかといったサービス全体の設計や機能開発からみんなで考えて作っていく。そうすると思い入れややりがいも違いますし、プロダクトそのものの質も変わってくるかもしれない。オーダーに応えるUIを作ることももちろん大切ですが、それだけだとやれることは限られてしまって、デザイナー自身の成長の余地も狭くなってしまう気がしています。
真崎:
プロダクト共創におけるスタイルを変えてみたり、新しいチャレンジや変化をチームとして次々と受け入れていくことができるのはなぜでしょう?
近藤:
新しいメンバーがどんどん加わってくれていることが、いい変化を生み出しているような気がしますね。社内の基準や考えがアップデートされるというか。例えばほかの会社だと目標達成に向けてここまでやっている、といった取り組み方やスタンスをインストールできたり。AIなどについて活用方法やメリットを教わることで、新たなツール導入のきっかけになったりもしました。
真崎:
化学変化が起こるんですね。
近藤:
はい、半ば強制的に全く異なる文化が組織に混ざるわけじゃないですか。「他社はこうなんだ」「もっと外に目を向けていかないと」「うちでも取り入れられそう」など、マインドが変化する機会になるのだと思います。
変化を加速し、さらに理想的な共創へ
真崎:
それぞれ、今後ここをもっとブラッシュアップしたいというところはありますか?
椙浦:
デザイナーに依頼をしていく際、何をやってほしいかある程度スコープを絞って渡していくことも重要だと感じています。まっさらな状態過ぎても考えることが多くなってしまうので、シャープにした方がいいなって。
真崎:
具体的にはどういうことでしょう?
椙浦:
例えばウェブページ開発でいうと、ランディングページ、申込ページ、完了ページとあったときに、3つのうちのどこかを良くしてほしいみたいな渡し方はしないというイメージです。どんなユーザーがどう困っているのかを定量的に調べるところまでは進め、取り組むべきところの優先度をつけておく。それがランディングページという判断になれば、そこに絞ってインターフェースやデザインを考え始めてもらうということですね。
真崎:
上流からみんなで話し合いながら進めるものの、風呂敷を広げすぎてしまうと議論が発散してまとまりづらくなってしまう。だからあらかじめ考えるスコープは絞って渡していくと。
椙浦:
はい、でも狭めすぎると今度はできることが限定され窮屈になるので、そこは調整しながらだと思っています。
真崎:
PdMがある程度までは考え、デザイナーの自由度もちゃんと残せるようにする。近藤さんはブラッシュアップしたいことはありますか?
近藤:
ユーザー解像度の向上に取り組んでいきたいです。まだまだユーザーのことを知り切れていない印象があって。
真崎:
なぜユーザー解像度向上が大切なんでしょう?
近藤:
ユーザーを知らないと何もできないと思うんです。例えば僕らが扱う「スカウト」サービスでいうと、マネジャー以上だと実際にスカウトを送った実体験があるためリアルな気づきや困りごとなどの話を聞けます。でも、現場メンバーは、スカウトを送った経験がないケースが多く、そういった体験者の声もあまり共有されていない。そうなると、サービスのクオリティが伸び悩んでしまう恐れがあると感じていて。ユーザーにどんな使われ方をしていて、じゃあ自分だったらどう使いたいかを話し合うような、チームメンバー内での学びの場をもっと作っていけるといいなって。
真崎:
具体的に考えていることはありますか?
近藤:
例えばプロトタイプで作ったUIを、ライトにユーザーからレビューをもらえるような仕組みだったり。ユーザーからのフィードバックが得られるような環境づくりはトライしていきたいですね。今、ユーザー理解を目的としたチーム全体での情報共有の時間も、主導して行っているんです。
椙浦:
どういうユーザーが使っていて、どんなフィードバックをもらったかを共有してくれていますよね。エンジニアやビジネスサイドのメンバーなど、参加者もどんどん増えていて。
真崎:
いろんな職種の人が集まっていてとてもいいですね。
近藤:
いい時間ですし、気づきや学びがあって楽しいです!

これからも、「全員が開発メンバー」として
真崎:
ありがとうございます。最後に、さらに理想的なプロダクト共創を実現していくために必要なことや、メンバーに期待することを教えてください。
近藤:
「全員が開発メンバー」という意識を持つことが一番大事だと思っています。エンジニアは設計や実装に、デザイナーはデザインや表現や言語化に、PdMは構造化と情報設計に強みを持つ開発メンバー、といったように。自分の職能のスキルを伸ばしつつお互いの職能に関わる知識についても学びを深め、一人ひとりが開発メンバーという意識で関係性を作っていけると、さらにいいスクラムチームになると思っています。
椙浦:
プロダクトを成長させる上で、デザイナー目線のフィードバックや意見はとても重要だと再認識しています。ですので、デザイナーにはこれまでのやり方にとらわれず、さらにはみ出してもらいたいですね!そのために、PdMとしてみんなが意見を言いやすい環境整備を引き続き進めていきたいです。
近藤:
ありがとうございます!今後もデザイナーという枠をどんどんはみ出していきたいと思います。あと個人的にですが、業界のトレンドや最新技術を共有するカンファレンスやイベントで、ゲストスピーカーとして社員が登壇している会社は、やはり開発力が優れていてデザインやPdMの能力が高い人が揃っている印象があって。パーソルキャリアもそこに並べるポテンシャルがあると思うので、チームとしても個人としてもさらにレベルアップして、そのポジションを目指していきたいですね。

※ 所属・肩書および仕事内容は、取材当時のものです。
執筆:星野 正太(White Note Inc.)
撮影:シュガーフォト












(NUTIONで一緒にデザインしませんか?)
未知の領域へ越境し、成長し続けていきたい人。「はたらく」へのデザインを通じ、より社会へ貢献できる仕事がしたい人。NUTIONは、そんな価値観を共有できる仲間を探しています。
真崎:
本日はよろしくお願いします。まずはプロダクト共創で課題だったことを聞きたいのですが、椙浦さんからお願いできますか?