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ミッション・ビジョン・バリューと現場をつなぐ架け橋を作る、doda ダイレクト プロダクト統括部の行動指針策定プロジェクト。

Service :
doda ダイレクト
Launch :
May 2024

(プロジェクト概要) Outline

全メンバーの意見を大切にしながらボトムアップでゴールを目指す。

企業が転職希望者に直接アプローチができる、国内最大級のスカウトサービス「doda ダイレクト(デューダダイレクト)」。約373万人(2024年6月末時点の累計スカウト会員登録者数)のデータベースの中から、転職希望者の登録情報を確認した上で、企業が直接スカウトメールを送れるサービスです。

今回、取り上げるのは、このdoda ダイレクトのプロダクト企画・開発を担っている「プロダクト統括部」の新たな行動指針の策定プロジェクトです。

2023年12月から2024年5月の約半年にわたり、ボトムアップで行われた本プロジェクト。「組織力向上のために、組織内で共通の価値観を持つ」という目的は達成されたのでしょうか。その過程や成果について、詳しくご紹介します。

(プロジェクトの背景) Background

常日頃から現場で使われる行動指針にするために。

doda ダイレクトの前身サービスである「DODA Recruiters(デューダ リクルーターズ)」を2016年にローンチしてから、約8年。プロダクト統括部では、新たな責任者の就任を機に、2030年を見据えた事業戦略をバックキャストで立案するとともに、ミッション・ビジョン・バリューを刷新。組織課題の洗い出しと組織戦略の策定も実施しました。

ところが、この過程で浮き彫りとなったのが、「組織内で共通の価値観が定まっていない」という課題でした。この課題を解消すべく、2人のサービスデザイナーが主導して、プロダクト統括部内の行動指針を定めることに。行動指針は現場で使われてこそ意味がある。メンバー自身が戦略を実行する主体であり、日々の業務推進で一人ひとりが立ち返ることのできるものでなければならないという想いから、プロジェクトを推進するタスクフォース(特定の課題やプロジェクトに取り組むために編成される、期間限定かつ目的志向の特別チーム)を立ち上げることが決まりました。

メンバーの自主性を重んじたいと考え、タスクフォースメンバーはリーダークラスから挙手制で募集することにしたものの、ただ「集まってください」というだけでは、日々の業務で忙しいメンバーが十分に集まってくれるとは限りません。そのため、タスクフォースに参加すると「ファシリテーションの力が付きますよ」「組織の視点を養う機会になりますよ」といったメリットを伝えたほか、スケジュール調整や事前準備などの作業はサービスデザイナーが請け負うことで、負荷なく参加できるよう工夫しました。

こうして集まった9名のタスクフォースメンバーが、策定プロセスの設計やワークショップのファシリテーションなどを担い、プロダクト統括部の全メンバー約30名を巻き込みながら、行動指針を策定することになりました。

(プロジェクトのプロセス) Process

一般的なデザイン思考では「発散」と「収束」の2つのプロセスを踏みますが、今回のプロジェクトでは、「そろえる」「ひろげる」「まとめる」「えらぶ」「みがく」の5段階のプロセスにブレイクダウンしてワークショップを設計しました。全メンバーから広く意見を集めるステップと、少人数でアイデアを詰めるステップを交互に行うことで、スムーズな進行を実現するためです。実際に、それぞれのフェーズで行ったことは、以下の通りです。

そろえる(タスクフォースメンバーのみ):

前提として、行動指針の役割や策定する目的をすり合わせるとともに、組織が新たに掲げた「No.1テック組織になる」という理想像の状態目標を定めるために、「No.1とは?」「テックとは?」「No.1テックとは?」という問いを立て、メンバー間で認識をそろえていきました。

ひろげる(プロダクト統括部の全メンバー):

ひろげるのワークショップの目的は、日常から発想して行動指針につながるヒントを掴むことです。「現在と未来を見つめて、見えてくるものとは?」という問いを立て、アイデアの発散や深掘り、行動の指針につながる観点の抽出とその重みづけを行いました。

はじめに個人の事前ワークとして、以下の3つの観点で、自分の頭の中をmiroに付箋で書き出してもらいました。

  • Step1:まずは今を凝視する…現状のBAD/GOODな行動
  • Step2:遠くの未来をイメージする…理想に向けたMOTTOな行動*
  • Step3:足元に立ち返ってみる…私たちらしさ

*MOTTOとは「理想に向かって足りないこと」を表した本ワークの造語です。

その後、約30名のメンバー全員が集うオンラインのワークショップを実施。6名ずつのグループに分かれて、ほかのメンバーが宿題で書いた付箋の中から話したいものに投票してもらい、投票の多かったトピックについて皆でディスカッションを行いました。

議論のベースとなるmiroのボードでは、横軸に「現在」と「未来」を、縦軸に「(表層的な)状態→行動」と「(深層にある)価値観・マインド」を取っています。そこに付箋を分類したり追加したりしながら議論を深めた後、特に大事そうなものに1人1票ずつ投票してもらいました。さらにワークショップの最後には、全体で共有する時間も設けています。

まとめる(タスクフォースメンバーのみ):

ひろげるのワークショップで可視化された500枚以上の付箋をもとに、タスクフォースメンバーでディスカッションを実施。「未来・社会の創り方」「組織のあり方・変え方」「人との関わり方」「自分のあり方」「プロダクトの作り方」「業務の仕方」の6つの切り口でグルーピングを行い、行動指針を15個の候補にまで絞り込みました。

えらぶ(プロダクト統括部の全メンバー):

再びプロダクト統括部の全メンバーが集まり、タスクフォースメンバーが出した候補をもとに、「『組織ビジョン』と『共感して実行できる』の両方を満たす行動指針とは?」という実行者視点で、言語化・視覚化に取り組みました。ワークショップの流れは、以下の通りです。

  1. 候補の中から「特にいいなと思ったもの」と「特にう〜んと思ったもの」を3つずつ選んで投票する。
  2. 上記をもとに、チームに分かれて議論を行い、認識をそろえる。
  3. チームで行われた議論の結果をまとめる。
  4. 全体で発表する。

こうして、最終的な9つの行動指針の種となる言葉を選定しました。

みがく(タスクフォースメンバーのみ):

それぞれの行動指針にタスクフォースメンバーを割り当て、説明文や実践例としての具体的な行動を考えました。これによって、後から入ったメンバーも行動指針を体現するために何をすれば良いのかわかりやすくなっています。

例:水準を上げ、共創する

<具体的な行動>

  • 自身の得意分野は何なのかを考え、自己開示したり、仕事で体現しよう。
  • ほかメンバーの特徴・特技を自分から知りに行こう。
  • 職能にとらわれず、ゴールに向かって最善策は何なのか、議論を尽くそう。

また、日本語を母国語としないメンバーでも理解しやすいように、英語を母国語とするメンバーにも協力を仰ぎながら行動指針の英訳を行ったほか、デザイナーによるイラスト化にも取り組みました。

最終的に完成した9つの行動指針

  1. 水準を上げ、共創する
  2. 控えずに、伝え合う
  3. 一歩踏み出す
  4. 多次元で捉える
  5. 真摯に応える
  6. 最良まで研ぎ澄ます
  7. 余白を生み出す
  8. “らしさ”をつくる
  9. 全霊を持って糧にする

(プロジェクトの詳細) Details

言葉だけでなくビジュアルでも伝える。

プロダクト統括部全員の想いが詰まった行動指針を、デザイナーがどのようにビジュアライズしていったのか、その過程をご紹介します。

最初に着手したのは、「水準を上げ、共創する」。この言葉を聞いて、「人の力で推進する“カヌー”を想起した」というデザイナーが描き起こしたのが、以下のイラストです。

このイラストがほかのメンバーから好評だったことから、これを基準として残りの行動指針についても検討していくことに。その際、次のようなポイントを大切にしていきました。

  • ひたすらmiroを見返しながら、メンバーの会話を思い出す。
  • とりあえず手を動かしてみる。作りながら軌道修正する。
  • プロダクト統括部内で日頃から大切にされている「MVP(Minimum Viable Product):ユーザーのニーズを満たす最小限の機能を持つ製品を段階的に提供し、フィードバックを得ながら改善していく」の考え方に基づき、原初的な発明にフォーカスする。
  • 具体と抽象を行き来しながら、モチーフに至った背景を言語化する。

こうして辿り着いたデザインコンセプトが「手段」でした。

9つの行動指針の中で、デザイナーが最もビジュアライズに苦戦したのが、「一歩踏み出す」と「“らしさ”をつくる」の2つです。

「一歩踏み出す」は、宇宙に飛び出す「ロケット」や歩き始める「足」など、該当するモチーフが多数あったためです。いくつもの候補の中から、原初的な発明にフォーカスしたところ、空を舞う「飛行機」にしようと思い至りました。しかし今度は、飛行機のどのアングルを採用するのか、迷いが生じたのです。何パターンも作成し、ほかのビジュアルとの兼ね合いで、今の形に終結しました。

「“らしさ”をつくる」の難しさは、“らしさ”という抽象度の高い言葉を具現化するためのモチーフ選びにありました。「らしさ」や「エモーショナル」といったワードで検索してみたときにハートが出てきたものの、原初的な発明とは言えず、ほかのビジュアルと並べたときに浮いてしまう懸念がありました。そこで「何か手触り感のあるもので、ハートを作れるものはないか?」と発想を切り替え、「ハートを刺繍を縫っているミシン」に行き着いたのでした。

完成したビジュアルは、「バーチャル背景」や「デスクトップ背景」、SlackやTeams用の「スタンプ」など、メンバーが日頃から気軽に利用できるアイテムとして展開し、さまざまな場面で活用されています。

(実績と効果) Impact

行動指針をメンバーが自然と意識できる環境に落とし込む

9つの行動指針を組織内に浸透・定着させるために、評価制度や表彰制度に行動指針を組み込んだり、行動指針の理解度や実践度を測るアンケートを毎月実施したりすることで、メンバーが自然と意識できる環境を整えました。

具体的には、毎月のOKRの進捗をメンバー間で確認する「OKR進捗会」や、四半期に一度の表彰の場である「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)Award」、そして半年に一度の「キックオフ」といった既存の部内イベントと行動指針を紐づけて、メンバーが行動指針に触れ続けられるようにしているほか、目標設定のフォーマットにも、「どの行動指針を実践するか」「そのために何をするか」を記入する項目を追加しています。

今回のプロジェクトを通じて、当初の目的であった行動指針という共通の価値観を持てただけでなく、ワークショップという共通の経験を得られたことで、組織の一体感や仲間意識を大いに高めることができました。

今では、こうした取り組みが他部署へも広まり、プロダクト統括部の上位組織であるタレントソーシング事業開発本部においても、同様の取り組みが始まっています。

(メンバーからのコメント) Voice

組織文化の言語化には以前から興味があったので、今回のプロジェクトでは私自身も楽しみながらリードすることができました。また、行動指針の浸透施策の一環として、言語化だけでなくビジュアライズにも取り組んだ結果、想像以上の反響を得ることができ、デザインの力の大きさを改めて実感しています。今後も、デザイン組織として、このような活動をさらに増やしていきたいです。

P&M戦略本部 デザイン推進統括部 横断戦略デザイン部 戦略デザイングループ リードデザイナー

中村 佳生 さん

以前から「人や組織」を自分の重点テーマにしていたため、このプロジェクトに関われたことを非常に嬉しく思います。部内の全メンバーとともに、デザイン手法を用いた共創を実現するなかで、人や組織の熱量の変化を肌で感じることができました。これからも組織文化の醸成のような形にしづらい領域においても、デザインの可能性を探っていけたらと考えています。

P&M戦略本部 デザイン推進統括部 横断戦略デザイン部 戦略デザイングループ リードデザイナー

西尾 ひとみ さん

もともとインナーブランディングデザインに強い関心があったので、このプロジェクトに参加できたことは、とても貴重な経験となりました。また、今回のように「短期的な成果は見えづらいけれども重要な取り組み」に対して、メンバーが一丸となって共創できる組織であるとわかり、改めてこの会社への愛着が深まりました。

カスタマープロダクト本部 デザイン統括部 デザイン2部 dodaダイレクトデザイングループ リードデザイナー

近藤 鷹冶 さん

(クレジット情報) Credit

Producer
岡本 旬平
Project Owner
タレントソーシング事業開発本部 プロダクト統括部の皆さん
Facilitator & Designer
西尾 ひとみ / 中村 佳生
Designer
近藤 鷹冶

(プロジェクト情報) Information

※ 所属・肩書および仕事内容は、取材当時のものです。

執筆:野本 纏花
編集:重松 佑(Shhh inc. )

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