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「インハウスの良さは、もっと発揮できる」。
半径2メートルから広がった、共創の輪

転職サービス「doda(デューダ)」は、NUTIONのデザイナーも含め、多くのメンバーが開発に携わる大規模プロダクトです。品質や意思決定のスピードを保つため、これまではディレクターが企画、デザイナーが制作というように役割を分ける体制が最適解として機能してきました。

そのような安定した仕組みを大切にしながらも、体制を客観的に見つめ「インハウスならではの良さを発揮できるよう、もっと上流工程から関わって、プロダクトの成果に貢献したい」と考えたデザイナーの吉田さん。自ら周囲に働きかけ、行動を重ねることで、ディレクターとデザイナーの共創関係を構築。さらに、デザイナーの役割を拡張しながら、デザインチームのプレゼンスを向上し、プロダクト改善に貢献しています。

デザイナーが施策の企画段階から関わる体制を築き、チーム内外の信頼を得ていくまでには、どのような行動があったのでしょうか。そこで今回は、吉田さんにこれまでの過程を振り返ってもらいました。

  • 吉田 知布味 さん

    カスタマープロダクト本部 デザイン1部 デザイナー

    紙媒体を中心としたグラフィックデザインからキャリアをスタートし、HRや不動産領域でUIデザインに従事。2024年にパーソルキャリアへ入社し、現在は「doda」のUI/UXデザインを担当している。チームとして高いアウトプットを出し続けるための仕組みづくりに関心があり、デザインの意思決定を言語化し、ステークホルダーと意図を共有しながら進めていくプロセスを重視。現在はチームリーダーとして、メンバーそれぞれの持ち味を活かし合える組織のあり方を模索している。

受託の殻を破るために踏み出した“半径2メートル”からの第一歩

まずは吉田さんが所属されている「dodaエージェントエンハンス開発スクラム」がどのようなチームなのか教えてください。

吉田:

「doda」のキャリアカウンセリングの実施数向上を目的とした、ディレクターとデザイナーとエンジニアから成るチームです。サービスデザイン部の中には、KGIごとにこのようなスクラムがいくつかあり、それぞれのKPIを達成するために必要な改善施策の企画立案から実行までを担っています。私がパーソルキャリアに中途入社した約1年前にdodaエージェントエンハンス開発スクラムが立ち上がり、初期メンバーとして参画しました。

なるほど。吉田さんが入社された2024年当時の仕事の進め方はどのような形でしたか?

吉田:

まずディレクターが改善施策の企画を立て、ワイヤーフレームを作成し、上長の承認を得ます。その後、私たちデザイナーは、承認が下りたワイヤーフレームをもとにUIを制作していきます。この進め方は意思決定が明確で、スピード感を保ちやすいなど、運用上の強みがありました。一方で、制作の段階に入ってから「ここはこうしたほうがユーザーにとってより良いのでは」と感じることがあっても、承認済みの要件を前提に進める必要があるため、大きな変更が難しい場面もありました。より良いユーザー体験につなげていくためには、すでに決定した仕様を形にするだけでなく、施策の意図や勝ち筋をディレクターと一緒に、もう一段深めていきたい。企画段階からデザイナーも議論に参加できる形へと進化させたい。そう考えるようになりました。

吉田さんはパーソルキャリアに転職する前、どのような立場でお仕事されていたのですか?

吉田:

前職では、制作会社に所属しながらクライアント先に常駐して業務をしていました。常駐という環境だったので、デザイナーとしても制作だけに閉じずに、要件の整理や相談の段階から関わろうとする動きはしやすかったんです。とはいえ最初からスムーズだったわけではなくて、周囲の巻き込み方や関与の仕方はかなり試行錯誤していました。

だからこそ、次の可能性が見えたんですね。少人数で回すために最適化された進め方がある一方で、吉田さんはインハウスならではの強みをさらに活かして、企画段階から体験を磨くところまで踏み込めるんじゃないか、と。

吉田:

そうですね。当時はスピードと再現性が最重要でした。限られた体制で確実にリリースを積み重ねるために、役割分担を明確にして各自が担当した案件に集中するやり方が、合理的に機能していたんだと思います。

ただ、私の中では「仕様が固まる前の早い段階からディレクターともっと対話できれば、インハウスデザイナーとしてより大きな価値を発揮できる可能性があるのに」という思いは強くありました。

とはいえ、転職して早々、これまでのやり方を変えようとするのは勇気がいることではありませんでしたか?

吉田:

はい。入社してすぐの頃は、「空気を読まずに大暴れしているかも」と不安になることもありました(笑)。でも、私が入社したときにマネジャーから「ディレクターの懐に入って、どんどんやっていいよ。伸ばせるだけ手を伸ばして、デザイナーの役割を拡張してごらん」と背中を押されていたんです。

だからいきなり全体を変えようとするのではなく、自分の担当領域から手を伸ばせる“半径2メートル”の範囲で、小さく始めることにしました。

受発注の壁を越えた、ディレクターとデザイナーの共創の軌跡

そこから半年で「NUTIONアワード」と「カスタマープロダクト本部アワード」という社内のアワードを受賞されたんですよね。具体的にどのように進めていったのか、教えてください。

吉田:

あるとき、ディレクターと話す中で「デザイナーが数字やビジネス状況に関心を持っていることが、ディレクターから見えにくいのでは」と気づきました。

そこで、これまでデザイナーが参加していなかったミーティングにも積極的に出て、ディレクターが何に悩み、どこで判断しているのかをまず観察してみることにしたんです。

ディレクターの状況が理解できてきたと同時に、「デザイナーが上流工程を並走することへの前向きな期待」をディレクターも持ってくれていると感じました。デザイナーとしてできることを考え、「企画承認前のラフ作成もやりますよ」「この仮説なら、こんなデザイン案はどうですか?」「このあいだのA/Bテストの結果を知りたいです」など、これまでディレクターが一人で進めていた業務に少しずつ介入していきました。

その結果、ディレクターからの相談回数は月平均2回から7回に増え、デザイナーが企画段階から関与した施策の割合も2割から8割にまで増やすことができました(※)。

このような信頼関係の構築が、施策のスピードや質の向上にもつながり、当初掲げていたデザイナーのプレゼンス向上という目標にも近づけたと感じています。

※「dodaエージェントエンハンス開発スクラム」範囲内における2024.102025.03時点の比較 

このアワードをきっかけに、さらなる変化があったそうですね。

吉田:

はい。アワードによって、この取り組みが成果につながる進め方として社内で認識されて、周囲の見方や期待値が変わった感覚がありました。結果として他のスクラムにも広がっていき、職種を越えて関心を持ってくれる人が増えたことで、デザイナーが上流から関与することが、より自然な選択肢になっていったと思います。

「デザイナー個人の強み」から、「チームの力」へ

こうした取り組みを進めていく中で、何か心境の変化はありましたか?

吉田:

スクラム内での働きかけに加えて、デザイナーチーム内での連携も必要だと感じました。個人の実践として成果が出ても、それがチームの力として積み上がっていかなければ広がりにくい。だからこそ、点で生まれた取り組みを、チームとして再現できる形にしていきたいと思ったんです。

ディレクターが相談しようと思っても、デザイナーチームとして受け止める土台がないと、せっかく芽生えた共創が続きにくくなってしまいますもんね。

吉田:

そうですね。当時は各スクラムにデザイナーが1人ずつという体制で、みんな自分の領域に深くコミットしていました。その分、横で相談したり、途中経過を共有したりする余白が限られていて、他のデザイナーの状況も見えにくい状態だったと思います。

そこで、知見を個人の中で完結させずもっとチームで共有し合えるよう、まずは「デザイナー同士の壁打ち文化をつくれないか」と考えたんです。雰囲気ではなくて、仕組みとして定着させるため定期的な朝会を立ち上げて、相談を受け止める枠を確保して。その朝会で困りごとが出たら、その後にSlackのハドルで深掘りする、という流れも生まれました。

その結果、相談の入口が明確になり、Slack上でも気軽に声をかけ合う場面が増え、壁打ちが継続的に回るようになっていきました。

レビュー体制も広がっていったとか?

吉田:

はい。以前は、エンジニアにデザインが渡ったら、それ以降はデザイナーが関与していませんでした。でも、インハウスでは、デザインが形になってユーザーに届くところまで含めて、デザイナーの責任範囲だと思っていました。だから品質担保の土台として、まずはデザイナー同士で意図・設計を確認し合う「デザインレビュー」を、さらに実装後の再現性を確認する「実装後レビュー」を文化として作りたかったんです。

一方でデザイナーの工数が増えるのは否めません。できれば避けたいと思う人がいたとしても不思議ではなくて。だからこそ、当時のマネジャーだけでなく、サブマネジャーや同じグループのメンバーとも連携しながら、レビューの仕組みを整えていきました。

また、今期からはスクラムに2名以上のデザイナーが入るようになったので、デザイナー同士のペアレビュー制度も導入しました。メンバー同士でレビューを行い、通過すればリード以上のメンバーとレビューするという2段構えのレビュー体制になっています。

ユーザー視点から生まれたデザイナー発の施策が実現

ディレクターとデザイナーの共創体制が実現したあと、なにか変化や成果はありましたか?

吉田:

「ディレクターが企画した施策に対して、デザイナーとして意見を言ったりアイデアを出す」という業務フローが定着してきたところから、さらに踏み込んで「デザイナー自身による施策の発案」にチャレンジしたんです。うれしいことにその施策の実施が決まって。デザイナーが発案した施策が実施されるのは、組織としては初めてでした。

また新たなフェーズに入った感触ですね。その施策はどのようなアプローチで発案したのでしょうか?

吉田:

「求人詳細ページにこのような導線があると、ユーザーにとって良い体験になるのでは」と考えた仮説に対し、私たちデザイナー自身でユーザーリサーチを行いました。そこでの発話やリアクションなどの根拠とともに、関係部署やディレクターに説明に行き、施策として通してもらうことができました。

ユーザーの気持ちに寄り添ったアプローチですね。

吉田:

まさにそうです。ディレクターは数字や事業状況から施策を組み立てる力が強い。一方で、ユーザーの迷いや体験のつまずきに目を向けるのがデザイナーの役割だと思っていました。だからこそ、数字の示す方向性にUXの視点を掛け合わせることで、施策の精度や納得感をもっと高められるんじゃないかと感じていて。

しかも、この求人詳細ページは、dodaの商品そのものであるため、長い間、手付かずになっていたところです。だからこそ、改善余地が大きい領域でもありました。

越境の先に広がるデザイナーの新たな可能性

今期から、ディレクターが所属するサービスデザイン部も兼務されているそうですね。

吉田:

はい。今はデザイナー業務が7割、サービスデザイン部のUX担当としての業務が3割という感じです。

また、今期から「エクスペリエンスグループ」というディレクターとデザイナーで構成されたチームが立ち上がっており、そこでの活動も始めています。現場は数値指標に責任がある。その意思決定の場面にユーザー視点を重ねて組織全体の視座をより高めていこうと、デザイナー・ディレクター横断で「UXの価値を組織内に醸成させていく」ためのチームが立ち上がったんです。

今期からはデザインチームのチームリーダーにもなられたんですよね?

吉田:

はい。もともとチームリーダーという役割はなかったのですが、「マネジメントをやってみたい」という私の思いを汲み取っていただき、チーム制の導入と同時にチームリーダーの任を与えてもらいました。

兼務で得られる知見を活かしながら、チームリーダーとしてメンバーが上流に関わりやすい環境をつくっていきたいです。

吉田さんの挑戦をマネジャーとして見守ってきた古藤さんから、コメントをいただきました。

AIの躍進により職能にこだわらない染み出しが求められ始めている中で、言われたものをつくるデザイナーでは事業も個人も前に進めません。そんな変革期に対応するためには多方面で大きな変化が必要でした。

吉田さんは、dodaという大きなプロダクト/組織の歴史や力学が生む壁にぶつかり、悩みながらも前に進み続けてくれました。誰もが「良さそう」という場面で、もう一度立ち止まり、見えた違和感を見て見ぬふりをせず、向き合い続けてくれました。

その粘り強さと誠実さが周囲を揺らし、大きな何かを少しずつほぐし、いまの変革へと繋がっていったのだと思います。dodaデザイン第2グループ マネジャー 古藤 舞華)

吉田:

立ち止まって悩む時間も含めて信じて任せてもらえたことが、私にとって大きな支えでした。自由に動けるように見守っていただき、本当にありがとうございます。

改めて、今回の取り組みを通じて、どのような学びがありましたか?

吉田:

私はUIを専門としてきたので、企画段階からディレクターと並走する経験も初めてで、私にとっては大きな挑戦ばかりでした。

初めのうちは「私がUXについて語っていいのだろうか」「企画から関わるなんて自分にはまだ早いかも」と思うこともありました。けれど飛び込んでみると、デザイナーの視点があるからこそ喜んでもらえる瞬間が想像以上に多くあって。誰かの役に立てた実感がうれしくて、次もやってみようと思えました。「任せてよかった」と言ってもらえる経験が積み重なるほど、自分の居場所や役割がじわじわ広がっていくのが楽しかったです。

迷ったときはまず一歩踏み出してみるという、その積み重ねが可能性を広げるんだな、と学びましたね。

デザイナーの枠組みを広げているような感覚でしょうか。

吉田:

そうかもしれません。「言われたものをつくるだけがデザイナーではない」と証明したいですし、「ユーザーにより良いものを届けるには、いまの自分に与えられている役割だけでは足りない」という思いで、ここまで走ってきました。

今期からディレクター組織との兼務が始まり、ディレクターと接する機会が増えたことで、ますますこの思いは強くなっています。「現状の課題は何か?」「ユーザーはどう感じているのか?」といった会話をしていると、職能の境界を越えて、プロダクトのために「あるべき姿」を語り合える状態に踏み込めている実感があります。

最後に、今後、挑戦していきたいことはありますか?

吉田:

UX担当としての兼務やチームリーダーといった新しい役割にきちんと向き合っていきたいのはもちろんですが、変わらず大切にしていきたいのは、デザイナーが「チームとして」価値を発揮し評価される状態をつくり、デザインの価値を継続的に届けていくことです。

そのためには、デザイナー一人ひとりが施策に対して問いを持って関われる場面を増やせたらうれしいです。主体的な関わり方がチームに広がっていくことで、はたらくことがもっと楽しくなり、デザイナーがより高く評価もされる。そんな良い循環をみんなで作っていけるよう、自分自身ができることを、探し続けていきます。

※ 所属・肩書および仕事内容は、取材当時のものです。

編集:重松 佑(Shhh inc. )
撮影:Hiroko Nakasugi

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